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石堂徹生「危ない食品の時代、何を食べればよいのか」

牛豚肉等や加工肉に発がん性認定、複数機関が「確実」…食品安全委は反論

文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

 1つは、肉類を焼いて焦げた部分に含まれている、ヘテロサイクリックアミン【編注7】という発がん物質だ。脊椎動物の筋肉中にはクレアチンというアミノ酸に似た物質があり、筋肉収縮のためのエネルギーを貯蔵する役割を果たしている。肉を焼くことによって、クレアチンが筋肉を構成するアミノ酸と反応し、ヘテロサイクリックアミンが生まれる。

 2つ目は、私たちの体内での話だ。肉類の脂肪を摂取すると、これを消化するために胆のうから胆汁酸が出て、その大部分は小腸から再吸収されるが、一部は大腸に達し、腸内細菌の働きで酸化されて、二次胆汁酸【編注8】になる。二次胆汁酸には発がん促進作用があり、大腸粘膜に作用して発がんを促す。

どう考えれば良いか

 食品安全委員会と国立がん研究センターの医科学論争については、今後の研究の推移を待つしかなさそうだ。しかし、それにしても実に悩ましい。赤身肉ブームの折柄、どう考えれば良いか。

 日本人の大腸がんリスクについて、「日本人の平均的な摂取の範囲であれば赤肉や加工肉がリスクに与える影響は無いか、あっても、小さい」【編注9】。ただ、健康全体を考えた場合、ほかの病気への影響も考える必要がありそうだ。

 赤肉には、たんぱく質やビタミンB、鉄、亜鉛など有用な成分もたくさん含まれている。「飽和脂肪酸も含まれ、摂りすぎは動脈硬化、その結果として心筋梗塞のリスクを高めますが、少なすぎると脳卒中リスクを高める」【同】

 実は日本では心筋梗塞より脳卒中の患者が多く、「(今回のIARC発表を気にして)極端に量を制限する必要性はない」【同】という。

 極端に走らず、「バランス良い食事を心がける」ことが大切といえるのかもしれない。
(文=石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト)

【編注1】農林水産省「国際がん研究機関(IARC)によるレッドミート及び加工肉の発がん性分類評価について(2015年10月26日)」

【編注2】内閣府食品安全委員会「『red meat』と加工肉に関するIARCの発表について」2015年10月27日

【編注3】【編注1】と同じ

【編注4】【編注1】の中の「国際がん研究機関(IARC)の概要と発がん性の分類」

【編注5】国立研究開発法人国立がん研究センター「情報提供 赤肉・加工肉のがんリスクについて」2015年10月29日

【編注6】国立がん研究センター「赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて」(多目的コホート研究)2011年

【編注7】廣瀬雅雄・食品安全委員会委員「食品中に存在する発がん物質について」。「食品中に含まれるヘテロサイクリックアミンの安全性評価情報に関する調査」報告書(三菱化学テクノリサーチ、2010年3月)など

【編注8】井藤久雄・鳥取大学医学部教授『食物繊維とがん予防』山陰中央新報社「台所でできるがん予防」。井上真奈美・田島和雄(愛知県がんセンター)『大腸がんのリスクファクター』「固形癌の疫学」連載第6回

【編注9】【編注5】と同じ

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト

1945年、宮城県生まれ。東北大学農学部卒。養鶏業界紙記者、市場調査会社などを経て、フリーに。現在、農業・食品ジャーナリスト

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