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筈井利人「一刀両断エコノミクス」

米国、規制で自国企業に巨額利益…「薬価55倍へ引き上げ=市場原理主義」批判のデタラメ

文=筈井利人/経済ジャーナリスト
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 もし米国が市場原理主義に支配されているのであれば、外国製ジェネリックの輸入に規制などなく、自由に販売できるはずである。しかし現実にはそうなっていない。

 問題は外国製品だけではない。米国内の製会社がジェネリック医薬品を製造・販売するにも、規制の高いハードルがある。

 米国政府で医薬品の認可権を握っているのは、食品医薬品局(FDA)である。ジェネリック医薬品を販売するには、FDAに申請し、先行薬との同一性や安全性を検査のうえ、認可してもらう手続きを踏まなければならない。この手続きには、2年程度といわれる長い時間と高い経費がかかる。

 もし米国が本当に市場原理主義に支配されているのであれば、ジェネリック医薬品の販売はもっと小さなコストで早く認められるはずである。しかし現実は違う。このため、大手と比べ資金力に乏しいジェネリック製薬会社は、ある程度市場規模の大きな薬でないと、開発に二の足を踏みがちになる。

 シュクレリ氏の一件では、別の製薬会社が10月、ダラプリムと同種の薬剤を開発し、1錠ほぼ1ドルで販売する計画を明らかにした。しかし、競争相手は今のところこの1社だけである。

規制で大手企業に恩恵

 以上のように、政府の規制のおかげで、米国の製薬会社は国内外の安価なジェネリック医薬品との競争から守られ、競争がもっと厳しい場合よりも高い販売価格で過大な利益を得ることができる。シュクレリ氏は極端な例かもしれないが、大手製薬会社も同様の恩恵にあずかっている。

 薬価高騰の犯人は、市場原理主義ではない。俗説とは逆に、市場原理が規制で阻害されていることが問題なのだ。

 今回の問題を受け、日本でも市場原理を非難し、あらためて政府の薬価規制を支持する声が聞かれる。しかし実際には、規制は薬価を引き下げる市場経済の働きを妨げ、長い目でみれば社会全体に高いコストを押しつけることになるだろう。
(文=筈井利人/経済ジャーナリスト)

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23:30更新
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