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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

1枚千円のとんかつがバカ売れ!平田牧場の闘魂経営…豚2頭から三元豚の王者への軌跡

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
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 良い豚肉の条件のひとつである飼料への取り組みもユニークだ。同社の豚は「こめ育ち豚」と呼ばれ、飼料用米を食べて育てられている。庄内地方の休耕田を中心に飼料用米を栽培し、同社が買い取る。国の「減反政策」を逆手にとった取り組みで、当初は「いくら減反でも豚に食べさせる米をつくるのは気が進まない」と難色を示す農家もいたが、提携した農家は「(減反政策で)自分の所有する田んぼすべてに稲が実っているのを見たのは初めての経験だったから、実際に飼料用米の稲が育つと気持ちよかった」と話す。

 5年前は栽培面積が約880ヘクタールだった飼料用米も、来年には2000ヘクタール弱になる予定。収穫量も10年の約5200トンから今年は8700トンに拡大した。三元豚も金華豚も、出荷まで15~20%の飼料用米を食べて育つという。味は同生協の組合員も吟味してきた。

1枚千円のとんかつがバカ売れ!平田牧場の闘魂経営…豚2頭から三元豚の王者への軌跡の画像5飼料用米の田んぼ風景

 こうして育てられた「平牧三元豚」は、国内に多く流通する三元豚(三種の豚の掛け合わせ)の先駆けの存在だ。「平牧金華豚」の肉の断面は霜降りで、筆者も豚しゃぶとして味わったが、とろけるような味だ。「牛肉に比べてくどくない」と語る人もいる。

「当社が直営する店は『ブランド発信地』の位置づけです。飲食店は『平牧の豚肉をその場で味わっていただく』店、物販店は『豚肉をご家庭でも味わっていただく』店です。従業員教育もあるので次々に開店させる気はなく、地道に歩んでいきます」(新田社長)

 同社は酒田市内にある国の登録文化財建造物「相馬樓」の保存・整備にも名乗りを上げて運営を行ってきた。「11月から相馬樓の舞妓弁当もリニューアルしました。『懐石弁当』の井筒さん、『宝石ちらし』のすしまるさん、『うな重』の治郎兵衛さん、当社の『金華豚特上かつ弁当』の4種類から選べるようになっています」(同氏)

 嘉一氏は、「地方の自治体は、地方経済の活性化のために大企業の工場誘致を行うケースが多かったが、その企業が業績不振に陥ると工場は閉鎖されてしまいます。結局は地元企業ががんばるしかないのです」と語っていた。東北地方でモノづくりに取り組み、東京都内で販売する同社は、「手間をかけておいしいものをつくる」事例として参考になりそうだ。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

●高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
1962年生まれ。(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。10月16日に発売された『吉田基準』(日本実業出版社)では取材・構成を担当。これ以外に『カフェと日本人』(講談社現代新書)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。
E-Mail:takai.n.k2@gmail.com

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