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町田徹「見たくない日本的現実」

新アベノミクス またしても耳触りのよい人気取りに終始

文=町田徹/経済ジャーナリスト
新アベノミクス またしても耳触りのよい人気取りに終始の画像1一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策(「内閣府 HP」より)

 安倍晋三首相は先週木曜日(11月26日)、首相官邸で3回目となる一億総活躍国民会議を開き、ほぼ2カ月前にお披露目した「新アベノミクス」を軌道に乗せるための「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」を取りまとめた。

 今回の最大の特色は、2カ月前はなかった3つの矢の「的」(数値目標、1.GDP600兆円、2.希望出生率1.8、3.介護離職ゼロ)を設けて、3つの矢が目指す目標を明確にしたことだ。わずかだが、これまでのアベノミクスの総括も行った。

 ただ、その的を射るための矢(実現のための施策)は、1.希望を生み出す強い経済、2.夢をつむぐ子育て支援、3.安心につながる社会保障、といった調子で、あまりにも曖昧なものにとどまっている。

 首相が本気で新アベノミクスを実現するならば、財源の確保や先送りし続けた成長戦略(規制緩和)の断行、外国人労働者の移民の受け入れなど、痛みを伴う改革が不可欠な事実を開示して、コンセンサスづくりに臨む必要がある。でないと、来年の参議院選を意識した支持率の回復策としか映らない。

自ら順調でないことを認める総括

一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」はA4用紙12枚にまとめられ、首相官邸のホームページにアップされている。最終ページの図を見ると、概要がわかる仕組みになっている。

 簡単に紹介すると、これまでのアベノミクスについて、「日本経済はデフレ脱却までもう一息のところまできている」と成果を誇示しつつも、「個人消費の改善テンポは遅れ、企業収益に比して設備投資も弱い」「足下の経済状況は全体として穏やかな回復基調にあるものの、一部に弱さもみられる」と、必ずしも順調でないことを認める総括をした。

 そのうえで、これまでの3本の矢(大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略)を一本化した新・第1の矢「希望を生み出す強い経済」では、賃上げによる労働分配率の向上、設備投資の拡大と生産性の向上などで「GDP600兆円」を目指す。新・第2の矢「夢をつむぐ子育て支援」で希望出生率1.8を、新・第3の矢「安心につながる社会保障」で介護離職ゼロを実現すると宣言した。

 ただ、今回取りまとめたのは、あくまでも「緊急に実施すべき対策」だ。肝心のことになると、「一億総活躍社会の構築に向けては、真に効果的な施策に重点化した上で、長期的かつ継続的に取り組んでいく必要がある。そのため、安定した恒久財源を確保しつつ、施策の充実を検討していくことが重要である」と課題の先送りに終始している。新アベノミクスのお披露目から2カ月という貴重な時間を無為に過ごした印象は免れない。

町田徹/経済ジャーナリスト

町田徹/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
1960年大阪生まれ。
神戸商科大学(現・兵庫県立大学)卒業。日本経済新聞社に入社。
米ペンシルべニア大学ウォートンスクールに社費留学。
雑誌編集者を経て独立。
2014年~2020年、株式会社ゆうちょ銀行社外取締役。
2019年~ 吉本興業株式会社経営アドバイザリー委員
町田徹 公式サイト

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