銀座を走る観光バス(「Thinkstock」より)
日本の輸出産業は円安で好調だと伝えられているが、自動車や化学製品などを除けば多くの輸出品は伸び悩んでいる。観光は輸出産業ではないが、外貨を獲得するという意味では輸出産業と比較されることが多い。
買い物だけで3兆円も消費が生まれるとなれば、宿泊や交通、飲食、アクティビティなどの関連産業はさらに活性化するはず――特に爆買いで金を湯水のごとく使う中国人観光客の懐を狙った誘致キャンペーンが全国で展開されている。
一例を挙げれば、ワタミは基本事業である格安居酒屋「和民」が業績不振に陥ったために、高級志向に業態転換した「銀政」をオープンさせた。その東京・六本木店は客を外国人観光客限定にしている。また、老舗百貨店などでも外国人専用ラウンジを設置して、外国人観光客の囲い込みを始めている。
これらは外国人限定と銘打っているが、実質的には中国人観光客をターゲットに据えていることは明白だ。爆買いを狙った店づくりは多くの店で進められているが、観光業界関係者からは中国人観光客だけに迎合する姿勢に疑問の声が出始めている。
その理由は、中国人観光客の購買行動にある。中国人観光客は、成田国際空港・東京国際空港(羽田空港)に到着した後、旅行代理店の用意したツアーバスに乗って一目散に東京を目指す。来日する中国人観光客の7割以上は旅行代理店が組んだ団体ツアーで日本に来ている。そのため、旅行代理店が組んだコース以外に足を向けることは、まずない。東京であれば銀座の家電量販店・ラオックスやドラッグストア・マツモトキヨシが中国人観光客の買い物をする場で、すこし金銭レベルの高い中国人観光客になると銀座の百貨店が加わる。
ツアー会社が用意した店だけで爆買いを繰り返す中国人観光客
だが、いくら金を持っていても、中国人観光客がほかの店で買い物をすることはほとんどない。そもそも爆買い中国人は、代理店が決めた特定の店でしか買い物をしない。ある観光関係者はこう話す。