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ルディー和子「マーケティングの深層と真相」

キティを「殺した」サンリオの失敗、肉まんでも登場 ミッキー長寿のディズニーとの差

文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学教授

 ブランドに陰りが出てきたことが、すぐに売り上げに直結するわけではない。だが、ブランドのアイデンティティがあいまいになるとブランド価値が落ち、その結果、売り上げが下がる例は多い。

 たとえば13年、イタリアの自動車メーカー・フェラーリの当時会長のルカ・ディ・モンテゼーモロ氏が、高級車「フェラーリ」の生産を年間7000台以下に抑えると語った。12年のフェラーリの販売台数は、中国の富裕層の購入などもあって過去最高の7318台を記録。これに対し、「これは多すぎる。フェラーリを買うのにふさわしい洗練された金持ちは世界に7000人以上はいないはずだ」というのが同氏の主張だ。この発言は、フェラーリのアイデンティティを明確にし、イメージを確立するのに役立つ。また、購買客に「自分は世界中で選ばれたわずか7000人のひとりだ」と満足感を与えることもできる。「そのためだったら4000万円払うのも惜しくない」と思わせるには非常に効果的な発言だ。

 だが、生産台数を限定するということは、売り上げに上限をつくることになる。フェラーリの90%の株を所有している米自動車大手FCA(フィアット クライスラー オートモービルズ)は、「新興国市場が伸びているのだから9000~1万台に増産してもよいのではないか」と、反対意見を表示。結局、フェラーリのラグジュアリー性を強調したかったモンテゼーモロ氏は会長を辞任した。辞任させられたというほうが正しいかもしれない。

 このように、ブランドアイデンティティやブランドイメージの維持と売り上げのバランスは難しい。

キティは飽きられてきた?

 キティの場合は、売り上げや利益が上昇するなかで、アイデンティティが損なわれてきているのは明らかではないだろうか。

 キティは1999年に女子高校生を中心にブームとなり、サンリオは過去最高となる188億円の営業利益を出した。当時サンリオは、キティ関連商品を自ら企画し直営店で販売する手法をとっていたので、ブームが去ると直営店の経費や商品在庫がコストとなり収益が急激に悪化。業績不振が続くサンリオを蘇らせたのが、08年に入社した鳩山玲人氏と、その手腕を買って三菱商事から引き抜いた創業者の息子の辻邦彦氏だ。

 2人が採用した戦略は、自ら商品を企画販売するというコストも在庫リスクも高い従来のビジネスモデルではなく、企業にライセンスを供与してキャラクター使用のロイヤルティとして売り上げの数%~10%程度の使用料をサンリオが徴収するという非常に利益率の高いビジネスモデルに変換することだった。そのかいあって09年からは営業利益が急増し、12年には99年の営業利益を超えるまでになった。

ルディー和子/マーケティング評論家

ルディー和子/マーケティング評論家

早稲田大学商学学術院客員教授。
国際基督教大学卒業後、結婚・渡米を経て帰国、
米化粧品会社のエスティ ローダー社で働きながら
上智大学国際部大学院経営経済修士課程修了。
エスティ ローダー社ではマーケティングマネジャー、
出版社タイム・インク/タイムライフブックス社での
ダイレクトマーケティング本部長を経て、
マーケティング・コンサルタントとして独立、
自身の会社ウィトン・アクトンを設立
ルディー和子オフィシャルブログ

Twitter:@shouhigaku

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