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東芝不正で処分の新日本監査法人、解体の可能性も…会計士引き抜き争奪戦が加熱

文=伊藤歩/金融ジャーナリスト
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「もともと監査は会社側が正しく作成したものを検証するものであって、不正発見を主目的にしたものではないが、社会の要請と批判に耐えきれず、監査基準に13年6月の改訂で不正リスクにも対応せよとの基準が設けられた。今回の処分理由は、この新監査基準を施行前の時点に遡って適用しているようなもの」(監査実務を手掛ける公認会計士)

 実際、オリンパスのケースでは、長年オリンパスの監査を担当していたあずさ監査法人が、粉飾の端緒を掴んでいながら後任の新日本にその事実を引き継いでいなかったわけだが、それでも業務改善命令で済んでいる。
 
 平成バブルが崩壊し、上場会社の不倒神話も崩壊してからかれこれ四半世紀。この間、巨額の粉飾が発覚するたびに、監査法人が粉飾を見過ごしていながら重い処分を受けないことについて、世論は批判的な目を向けてきた。
 
 市場参加者の憤りはなぜか粉飾を行った会社側よりも、見抜けなかった監査法人により強く向けられるのが常だ。企業は決算をごまかすもの、それを見抜くのがプロの役割、という意識が日本人全体の意識の根底にあるのかもしれない。過去の事例に比べ公平性を欠く今回の処分は、まさに世の中の空気を読んだものということなのだろう。

騙した東芝「が」監査法人を「変える」

 東芝自身も空気を読んだのか、新日本への行政処分がメディアで報じられ始めたあたりから、東芝「が」来期から監査法人を「変える」という報道も出始めた。同社が会見等で「変える」と発言していたため、メディアはその通りに報じたのだろう。経営陣も入れ替わり「過去の東芝と今の東芝は別の会社」という感覚もあるのかもしれないが、騙した側が騙された監査法人をクビにしてほかの監査法人に乗り換えるかのようなトーンの報道には違和感を禁じ得ない。

 新日本への行政処分発表と同日の12月22日、東芝は正式に来期の監査法人を新日本から別の監査法人に変えることを公表した。そのリリース上では「新日本から来年度の監査契約を締結しない旨の申し出があった」と記載しており、新日本が監査を降りるのであって、東芝が新日本をクビにするのではない、というのが事実だが、この違いがわかるように報じたメディアは筆者が知る限り皆無だ。

 今回の件が引き金となり、上場企業への監査法人の姿勢が変化するかといえば、その可能性は高くないだろう。監査法人が監査先の企業に対して、より突っ込んだ検証をしようとすれば、当然に監査日数は増え、その分企業が負担する監査報酬は増える。

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