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青木康洋「だれかに話したくなる、歴史の裏側」

NHK大河『真田丸』、三谷幸喜の脚本は歴史的に非常識?

文=青木康洋/歴史ライター
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 もし、家康が梅雪のルートで逃げていたら、後の天下人・徳川家康は存在しなかったことになる。そして、本能寺の変から11日後には、中国大返しを成功させた羽柴秀吉が信長の仇である光秀を山崎の合戦で討ち果たした。その後、秀吉は織田家の後継者を決める清洲会議を主導することで、天下獲りレースの大本命に躍り出る。

 つまり、天正10年は戦国時代の様相がガラリと変わった年なのだ。

主人公の名前は「幸村」か「信繁」か?

 ところで、筆者は『真田丸』を見ていて、ひとつ気になったことがあった。堺雅人演じる主人公の名前である。これまで「真田幸村」と呼ばれることが多かった主人公の名を『真田丸』では「信繁」と紹介しているのだ。

 実はこの人物、圧倒的に幸村名で知られてはいるが、「幸村」という名乗りは、生前の信頼できる史料には登場しない。彼の実名は「信繁」が正しいのである。

「幸村」という名が登場するのは、江戸時代に書かれた軍記物語や講談からである。その理由は定かではないが、徳川幕府の開祖・家康に歯向かった武将を英雄的に描く際、実名を出すことがはばかられたからかもしれない。

 さらに、大正時代に刊行された立川文庫の『真田幸村』が爆発的な人気を呼び、幸村の名を不動のものにした。現在でも、映画やドラマでは「真田幸村」と表記することが通例化しているほか、有名な歴史学者が書いた一般書でも幸村名で書かれ、「実名は信繁」と注釈を入れるのが普通である。

『真田丸』では、あえて実名の「信繁」を採用しているところを見ると、従来の「幸村イメージ」を覆そうとする制作者側の意欲が感じられる。

豪華キャストが演じる個性的な武将たち

 注目された『真田丸』の初回平均視聴率は、19.9%と発表された(関東地区、ビデオリサーチ調べ)。昨年の『花燃ゆ』が同16.7%、一昨年の『軍師官兵衛』が同18.9%だったことを鑑みると、まずは好発進といえるだろう。

 初回ということで、今後のストーリーや登場人物のキャラクターを視聴者に印象づけようという意図が目立っていたきらいはあったが、それを差し引いても、登場人物それぞれの個性が際立っていた。

 特に強い印象を残したのが、平岳大が演じた武田勝頼だ。インターネット上では、「初回のMVPは勝頼で決まり!」といった賞賛の声がしきりである。従来、勝頼は偉大な父・武田信玄亡き後の武田家を支えきれずに滅亡を招いた凡将として描かれることが多かったが、三谷脚本では優しさと品格のある悲劇の名将の雰囲気がにじみ出ていた。2回目の放送で、どのようなラストを迎えるのかが気になるところだ。

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23:30更新
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