
本連載前回記事『薬の原価率はわずか1%で暴利?安価で危険な中国・韓国製が大量流通…』において、薬の特許が切れてから発売されるジェネリック医薬品について述べました。今回はジェネリックにシェアを奪われないように奮闘する先発メーカー側についてみていきたいと思います。
2009年から10年にかけて、日本では新しい降圧剤が次々に誕生しました。一見すると日本の製薬会社の開発能力は優れているようですが、実態は逆です。これは、なかなか開発することができないゆえに生じた現象なのです。
製薬会社にとって理想的な展開は、次々と独創性のある強力な新薬を開発して、常に新陳代謝が繰り返されることです。そうであれば、たとえ売れ筋の薬が特許切れになって、ジェネリック医薬品がゾロゾロ出てきても、メーカーはびくともしません。
しかし、日本の製薬会社は、開発力で欧米のビッグファーマ(巨大製薬会社)に大きく後れを取っているのが現状で、新薬の開発は苦戦を強いられています。新しいヒット商品を生み出せない会社にとって、主力商品の特許切れは非常に恐ろしいことなのです。
通常、新薬は開発してから20~25年間の特許期間が認められ、その間は独占的に生産販売ができます。しかし、特許期限を迎えた途端、ジェネリックがゾロゾロ出てきてシェアを食い荒らすので、利益を得ることができなくなります。
製薬会社としては、そのような事態はできるだけ先送りしたいのが本音ですから、ジェネリックを封じる手段を講じます。
もっとも使われる方法は、「配合剤」の新薬づくりです。具体的には、特許期限切れが近くなった薬を、ほかの薬と合体させて「新薬」として申請するのです。承認されれば、新たに特許期限が設定されるので、ジェネリックのメーカーはその期限が切れるまで新薬のほうには手が出せず、1世代遅れた「旧薬」のジェネリックを売り出すことになります。
売れ筋の薬を合体させてつくった配合剤は、患者さんにとっても都合のよいことが多く、メーカーにとっては一石二鳥なのです。
09~10年に降圧剤の分野で配合剤の新薬が次々に誕生したのは、ブロプレス(武田薬品工業)、ディオバン(ノバルティスファーマ)など、降圧剤のブロックバスター薬(薬効で莫大な利益を生み出してきた薬)に期限切れが近づいたものが多かったからです。
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