NEW
中沢光昭「路地裏の経営雑学」

間違ったM&Aで企業がボロボロになる例も…深刻化進む事業承継で失敗しないための注意点

文=中沢光昭/経営コンサルタント
【この記事のキーワード】

, ,

 会社の価値をエクセルで計算したシートだけを見て判断し、「欲しいけど割高だなあ」と断念してしまうのは早計ではないかとも思われますが、ビジネスとしては正しい判断となります。一昔前に銀行員が「経営者の顔を見て貸す」と言っていたのが、いつの間にか主にデータベースとシステムが与信判断し、経営者との会話はあくまで与信判断の一材料にすぎなくなったのと同じ構図です。

 一方で、小口取引の世界は感情が価格に入ります。買い手によっては「この商品に乗った」「この立地が買い」などの勢いが価格を含めた判断に影響します。売り手も「そりゃ利益が出てないかもしれないけど、ここまでの努力を認めてよ」とか「今まで●万円も投資してきたのだから」などと、今までの想いを価格に乗せたりします。

 しかし、企業価値は基本的には利益や生み出されている現金に基づき計算されますので、過去に投資された時間や想いが利益に結びついていなければ意味がありません。もっとも、論理だけで割り切れないのが人間です。中小企業のM&Aにおいて特に売り手(株主)イコール経営者や幹部であることがほとんどですので、買収後のキーマンのモチベーション維持も重要であり、買い手企業が感情むき出しの値付けに歩み寄ることは間違いでもありません。

 売り手側に「理屈では~円だけれど、過去に大変な思いをしてきた、設備投資をしてきたから~円にしたい」という想いがあったときなど、相手(買い手)にそれを汲み取ってもらうためにどのように交渉するのか、その想いにどの程度重きを置くかなどは千差万別であり、答えはひとつではありません。そこで重要となるのが、相談相手となる仲介者なのです。

●特定の仲介者に依存するリスク

 買い手が複数のM&Aの経験を持つことはよくありますが、売り手が経験を持つことは極めてまれなので、売り手が仲介者の比較をすることは困難です。「言われてみれば特に他と比較したことはないけれど、恐らく良い仲介会社だろう」と思いながら取引が進んでいき成立するような状況は、結構あるのではないでしょうか。

 途中まで話が進んだときに何かの理由で疑問に思い、仲介者に相談してもどこか腑に落ちなかったとしても、「やっぱり白紙に戻して、仲介者を変えてやり直そう」という判断にはなかなかなりにくいでしょう。たくさんの人に会って説明の論理性や心象なども含めて決めるのがいいのでしょうが、忙しい中小企業の経営者にそんな時間を確保する余裕はなかったりもします。会社によっては某かの事情で「待ったなし」の状況に陥っており、時間に余裕がないこともあります。

関連記事

プレスリリース入稿はこちら サイゾーパブリシティ