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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

民泊、マンションでごみ放置や大騒ぎ問題が深刻化…国は民泊推進、その課題と論点とは

文=牧野知弘/オラガHSC代表取締役
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 こうした生活上のトラブルが議論の対象となっている内は、実は問題として序の口にすぎない。どんなに業者に規制を施しても、ホテルや旅館のように従業員が配置されているわけではない民泊には、セキュリティ面では限界がある。
 
 たとえば、借りた部屋で違法薬物の密売が行われる、売春の場として提供されるといったことは、現実にホテルや旅館でも起こりうるリスクである。これが一般の住民も居住しているマンション内で繰り広げられた場合の影響は計り知れない。

 あるホテルでは、「お得意様」のお客様が毎回予約のたびに部屋を指定してきたのだが、実は浴室の天井裏に銃砲を隠していたといったケースも報告されている。これが民泊で行われる可能性は否定できない。

 ましてや、緊張の増す国際情勢にあって、今後民泊で提供される一般家屋の部屋がテロリストなどの温床となるリスクについて、いまだ十分な議論がなされたとはいいがたい。

議論の余地は多い

 民泊がクローズアップされるに従い、マンション管理組合の理事長のもとには、住民からの「うちのマンションはどうなっているのだ」といった問い合わせが殺到しているという。また、実際に「民泊をやっている住戸がある」といった密告まであり、住民間でも疑心暗鬼状態のマンションもあると聞く。

 住友不動産ではこれから販売するマンションで、「民泊禁止」の条文を管理組合規約に盛り込んだ「民泊禁止マンション」の販売を発表するなど、過剰反応とも思える対応も飛び出した。

 総論としては、激増する訪日外国人への宿泊施設の円滑な提供、社会問題となっている空き家、空き住戸の活用の一環として、大いに推進すべきアイデアとして賛成する声が多いにもかかわらず、各論になると外国人を「異端」として「気持ちが悪い」もの、「交流を避けたい」存在として排斥しようとする、日本人の二面性をよく表した問題だともとらえることができる。 

 実際の民泊運営業者をどのように位置づけるかについては、まだ多くの議論の余地が残されているが、ここに商機あり、と考える不動産業者やネット業者などが入り乱れ、民泊に関する勉強会やセミナーは大活況である。既存のホテル、旅館の民泊事業への関与についても取り沙汰されている。

 民泊は以上みてきたように、いろいろな思惑が交錯しながら「取扱説明書」が作成されようとしている。感情的にならずに冷静な議論が行われ、十分に機能するシステムとして確立されることを願ってやまない。

「民泊? ああ、そんなものも昔はやっていたことあるよね」

 将来、そんな会話が行われていたとしたなら、日本の未来は暗いのかもしれない。
(文=牧野知弘/オラガHSC代表取締役)

●牧野知弘(まきの・ともひろ)
オラガHSC代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にもかかわり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。

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