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林總「かみくだいてご説明しますと……」

危機迫る東芝、いまだ必死に隠蔽する重大問題…利益はいくらでも小手先で操作できる

文=林總/公認会計士、経営コンサルタント、会計専門職大学院教員

 08年4月から14年12月まで7年間で合計1518億円に上る利益水増しの内容は、以下のとおりです。

 報告書にはその手口が詳細に綴られていますが、この調査には次のような前提がありました。

(1)調査対象期間の前提

 09年度から14年度第3四半期(ただし、09年度の有価証券報告書に記載されている比較対象年度である08年度を含む)を対象期間としています。つまり、08年以前に存在していた重要な事態は、ここでは触れられていないということです。

(2)調査対象項目制限の前提

 当初はインフラ事業の工事進行基準に限られていましたが、そのあと調査項目が追加されました。とはいえ、依然として以下4事業部における特定項目に限られた調査ということです。

・インフラ事業における工事進行基準案件に係る会計処理
・映像事業における経費計上に係る会計処理
・ディスクリート、システムLSIを主とする半導体事業における在庫の評価に係る会計処理
・パソコン事業における部品取引等に係る会計処理

 以上の範囲で調査した結果、利益が1518億円かさ上げされていたことが報告されたわけですが、ここで疑問が湧いてきます。東芝のような巨大企業にとって、この金額は会社の屋台骨を揺るがすような金額なのか。不正などしなくてもよかったのではないか、という疑問です。では、なぜリーマンショックが起きた08年を境にして、社長は各事業部に対して高い利益目標の達成を強要したのでしょうか。。

(3)派生的な修正項目への影響は考慮しない、とする前提。

 報告書では、以下の項目に対して派生的な影響が生じることが考えられるが、それらを考慮しないとしています。

・ア 棚卸資産の評価に関する事項
・イ 固定資産の減損に関する事項
・ウ 繰延税金資産の回収可能性に関する事項

 利益に与える影響額が小さいのであれば、この前提もうなずけます。しかし、14年3月期の場合、棚卸資産(9340億円)、固定資産(のれんだけでも5745億円)、繰延税金資産(2643億円)となっています。このうちのれんの多くは、06年に生じたものです。額が大きいだけに、これらの評価次第で東芝という巨大企業が一瞬で消滅するほどの破壊力を持っています。ところが、報告書には何も触れられていないのです。以上から、報告書は氷山の一角しか公表していないことが明らかです。

林總/公認会計士、経営コンサルタント、会計専門職大学院教員

林總/公認会計士、経営コンサルタント、会計専門職大学院教員

中央大学商学部卒業。外資系会計事務所、監査法人を経て開業。現在、株式会社林總アソシエイツ代表、公認会計士林總事務所代表、日本原価計算学会会員。国内外の企業に対して、ビジネスコンサルティング、ITを活用した管理会計システムの設計導入コンサルティング、講演活動等を行っている。

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