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徳岡晃一郎「世代を超えたイノベーションのために」

なぜ専門家は「役立たず」なのか?スーパージェネラリストを目指せ!

文=徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長
なぜ専門家は「役立たず」なのか?スーパージェネラリストを目指せ!の画像1「Thinkstock」より

 本連載前回記事で述べたように、世の中の課題が複雑多岐にわたり容易に解決ができない今の時代において必要な力が、「垂直統合の思考」だ。

 垂直統合の思考によって未来を見据え、課題設定を行い、そして課題解決までもっていく幅の広い力を身につけることができる。逆に、今の複雑困難な時代では、未来を予想しようとしても見えないし、見るだけでもしょうがない。戦略を策定するにも課題をどう設定するのか、それは多分に独自の世界観・未来観を持たねば、単なる現状の土俵上での比較優位、相対的な競争戦略に終わってしまい、本質的課題には到達できないし、サステイナブル(持続可能)ではなくなる。

 また、問題解決能力がなければどんなビジョンも戦略も絵に描いた餅だ。このように多面的な知性を持った「知的欲張り」でないとリーダーシップを取り切れないほど、現代の課題や競争環境は錯綜しているわけだ。

 では、知的欲張りのスーパージェネラリストたちは、何を垂直統合しているのだろうか。それはすなわち以下の7つの要素である。

・思想:今後の人類社会で重要になる考え方や哲学
・ビジョン:その結果、かならず起きてくるだろう未来の予想
・志:そのとき、自分はどういうことで貢献するのか
・戦略:そのための自社のポジションは?
・戦術:どういう商品・サービスで戦うのか
・技術:それを可能にするコンピテンシー(自分・自社の強み)は?
・人間力:それを実行する人材やリーダーはどういう資質が必要か?

 わたしたちは物事をある側面からだけ専門家として見がちだが、実際の場面では、専門家が専門的知見を寄せ集めても、大きなことは成し遂げられない。原子力発電の個々の分野の専門家やエネルギーの専門家が集まっても、原発の将来のありようやエネルギーの未来像は固まらない。現在の日本のように議論は漂流したままになってしまう。

原発問題議論に必要な7つの階層

 それゆえ、たとえば原発の議論をする目的は、未来の社会のエネルギーをどうするのかを決定することなので、まさに未来を構想することから始めないといけない。そんな未来像を描くのに、個々の技術の専門領域だけを語る人が何人集まっても意味がない。時代背景からきたる今後の人類の理念、未来の生活や産業の予測、資源や技術開発の予測、エネルギー問題への自国の立ち位置、国家運営・経済成長の戦略、短期的経済運営での影響や国民の理解、科学的知識や技術的知見、そして政界・官僚・関連産業などのリーダーたちの信頼といった要素が織り交ぜられて初めて決まっていくからだ。

徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長

徳岡晃一郎/経営コンサルタント、多摩大学大学院研究科長

ライフシフトCEO
多摩大学大学院教授、研究科長、フライシュマンヒラード・ジャパン シニア・ヴァイス・プレジデント、多摩大学社会的投資研究所所長

1957年生まれ。東京大学教養学部卒業。オックスフォード大学経営学修士。日産自動車人事部、欧州日産を経て、99年フライシュマン・ヒラード・ジャパンに入社。人事およびコミュニケーション、企業文化、リーダーシップなどに関するコンサルティング・研修に従事。2014年より多摩大学大学院研究科長、2017年ライフシフトを設立、CEOに就任。主な著書に『MBB:「思い」のマネジメント』(共著、東洋経済新報社)『未来を構想し、現実を変えていく イノベーターシップ』(東洋経済新報社)、『人事異動』(新潮社)、『ミドルの対話型勉強法』(ダイヤモンド社)、『人工知能Xビッグデータが「人事」を変える』(共著、朝日新聞出版社)、『しがらみ経営』(共著、日本経済新聞出版社)など他多数。
株式会社ライフシフト

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