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阿部寛、人気モデルから転落&ドン底の過去…覚悟の「尻出し」で人気俳優への道開く

文=堀雅俊/編集=アーク・コミュニケーションズ
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レッテルを実力で引きはがす

 転機が訪れたのは93年。30歳を目前にした阿部は、意を決して舞台作品を次の仕事に選んだ。劇作家であり演出家で直木賞作家としても知られたつかこうへいが、当時手がけた『熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン』に主演。

 つかの舞台は、「役者再生工場」とも評されるほど、さまざまな俳優の演技開眼を促し、一皮も二皮もむけ成長した表現者を生み出す場として、業界では知られていた。阿部もまた、その舞台に自らの俳優としての今後を賭けたのだ。

 それによって、殺人犯と対峙する警視庁の部長刑事でありながら、元オリンピック日本代表選手でバイセクシャルという難しい役に挑戦することとなる。脇を固める演技巧者たちが熾烈にしのぎを削る稽古場に身を投じ、二枚目を捨て、なりふりかまわず演じることに没頭。初日の幕が開くと、端正なマスクにド派手な化粧を施し、長身にドレスをまとって絶叫する阿部の姿がそこにあった。

 そして、2006年。テレビでは二枚目俳優としてのイメージを完全に払拭する機会を得られずにいた阿部は、ドラマ『結婚できない男』に主演。見た目はイイ男で仕事もできるのに、性格的には屈折した独身の四十男を好演する。病院の診察台にうつぶせになるシーンでは、下着をおろされて尻を丸出しにするという、まさに体当たり演技。阿部寛はみごと、自身に貼られてしまった分厚いレッテルを実力で引きはがした。

阿部寛=佃航平

『下町ロケット』の第6話、ガウディ編の初回。自らの努力不足を棚に上げて設計図を批判する若手技術者に、山崎技術開発部長が言った台詞が、俳優として苦闘に挑んだ阿部の姿に重なる。

「お前の薄っぺらい紙みたいなプライドなんて、ウチの会社じゃケツを拭く役にも立たないぞ。そんなもの今すぐ捨てて裸でぶつかってみろ!」

 現状を変えるために勇気をもって一歩を踏み出し、努力によって固い殻を打ち破り逆境を突破してきたからこそ、阿部寛の演じる佃航平には説得力がある。

「どこに行っても苦しいときが必ずある。そんなときは、逃げるな。人のせいにするな。それから、仕事には夢を持て」

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