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伊藤忠、盟主・三菱商事を屈服させた「傍流の天才社長」…敵意むき出しの緻密経営

文=編集部
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続投に対する社内外の反応

 岡藤氏の社長続投を中堅・若手社員たちは大歓迎している。「ほっとした」「安心して仕事に邁進できる」という声が圧倒的に多い。岡藤氏は口八丁、手八丁、陣頭指揮で業績を伸ばしてきた。4月に交代するのであれば3人の候補者がいたが、いずれも統率力という点では岡藤氏に大きく劣る。岡本均CSOは岡藤氏と同じ繊維出身で、岡藤氏が繊維の川下である欧米のブランドビジネスで辣腕を振るったのに対して岡本氏は川上の地味な仕事をしてきた。繊維から続けて社長を出すことになれば、社内の結束力が薄れる懸念があり、岡藤氏から見れば、3人とも「帯に短し、襷(たすき)に長し」の感があった。

 年末から正月休みに岡藤氏は対外的なビッグプロジェクトの進行状況や社内情勢を熟考して続投を決めた、ということだ。仮に会長になった場合、CEO兼最高経営会議議長として院政を敷くことになっただろう。つまり、続投しても交代しても伊藤忠の中心に岡藤氏がいるわけで、権力構造は変わらない。

 実は、岡藤氏は社長候補の本命ではなかった。当時会長の丹羽宇一郎氏が小林栄三氏(現会長)を社長に指名し、両氏が後継に岡藤氏を選んだ。丹羽氏は、「やんちゃなオレ、おとなしい小林の後は暴れん坊がいい」と語っていたという。大阪の繊維のトップとしては名前が知れ渡っていたが、東京の他部門の役員や社員には「岡藤って誰だ?」という感じだった。

 当初は、“よそ者”の岡藤氏に対して「お手並み拝見」といった、よそよそしい雰囲気があったが、先述したように社長就任と同時に「住友商事を抜いて業界3位になる」と宣言。「向こうみずを問わない社風にしたい」と粗削りな暴れん坊集団の復活をスローガンにした。岡藤氏は自分の特性をよく知っていたから、このような目標を掲げたのである。

 怖い社長である。7時半には出社する。本人から直接電話がかかってくるので社長のスタッフは広報部門を含めて、それまでに社長に伝えなければならないことをまとめておく。新聞や外電のチェックも済ませておかなければならない。自分で実践して成果を上げていたから、早朝勤務制を導入。経済界の「早朝勤務」に先鞭をつけた。

 16年3月期に税引き後利益でトップに立てば臨時ボーナスを出すと約束している。成果を出している人には、きちんと金銭面で報いる――。岡藤氏は商社業界の役員の中で2年連続最高報酬になったが、自分だけの利益を考えているわけではない。役員報酬が1億円を超える役員も増え、幹部社員の年収も岡藤時代になってかなり上がった。1億円に達してはいないが、それに近い執行役員もかなりいる。給料が上がったことから、社員の奥さんたちが、一番の岡藤ファンだという。
(文=編集部)

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