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町田徹「見たくない日本的現実」

マイナス金利という強烈な黒田バズーカ…一人で暴風雨に挑む「孤独な戦い」の限界

文=町田徹/経済ジャーナリスト
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好ましくない副作用

 もちろん、好ましくない副作用も予想される。何より懸念されるのは、銀行の資金運用難の深刻化だ。今回のマイナス金利の適用対象は、銀行が日銀に預ける当座預金に絞っている。それも今後の増加分に限定されている。とはいえ、一段の金利低下が進むのは確実で、これまでの金融緩和で減少傾向にある銀行の運用益が、じっとしていればさらに減るだろう。すでに日銀が長期国債や株式など比較的安定した運用が可能な有価証券を市場からごっそり吸収しており、銀行はよりリスクの高い資産での運用を増やさざるを得なくなる。長引けば、バブル時代を彷彿させるような安易な投融資が横行するリスクも高まるだろう。

 それだけに、黒田総裁から寝耳に水の政策導入を諮られた29日の金融政策決定会合では、審議委員から混乱と効果を懸念する声が噴出した。

 だが、年初からの世界的な株価の暴落や金融・外為市場の混乱を指をくわえて見ているのは、あまりにもリスキーだ。残された時間が少ないとの危機感もあっただろう。前述の記者会見で、黒田総裁は「日本経済は基調として緩やかに拡大していく」と平静を装ったものの、足元は悪化の一途をたどっている。特に、2015年10~12月期のGDP(内閣府が15日に速報値の発表を予定)が2期ぶりにマイナス成長に転落するとの見方は強まる一方だ。

 前後するが、先月29日発表の12月分の経済統計でも、実質消費支出が4カ月連続のマイナス、鉱工業生産指数が2カ月連続の減少と、景気減速を裏付ける黄色信号が続々と灯っている。

 金融政策決定会合の採決は接戦になったが、最終的に賛成5に対して反対4とわずか1票差ながら、黒田総裁のマイナス金利導入策が支持を得た。ちなみに、票決が1票差になるのは、国債購入量や年限を拡充した14年10月の黒田バズーカ2に続くケースである。

 内外の市場は、好意的な驚きをもって黒田バズーカ3を受け止めた。副作用への懸念で市場が乱高下する場面もあったが、29日の東京市場では、日経平均株価が最終的に前日比で2.8%上昇、長期金利は0.09%と初めて0.1%を割り込んだ。外為市場でも円安が進んだ。海外では、英国株(FTSE100)が前日比2.56%の上昇、米国株(ダウ工業株30種平均)が同2.46%上昇をそれぞれ記録した。短期的な効果は抜群だったと評価してよいだろう。

 問題は、黒田バズーカ3の賞味期限である。一般的に金融政策の効果は短期的なものだ。財政再建下で財政政策の出動が困難なのは明らかだが、アベノミクスの導入当初からの懸案である規制緩和を中心とした構造改革の、これ以上の先送りは論外である。

町田徹/経済ジャーナリスト

町田徹/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
1960年大阪生まれ。
神戸商科大学(現・兵庫県立大学)卒業。日本経済新聞社に入社。
米ペンシルべニア大学ウォートンスクールに社費留学。
雑誌編集者を経て独立。
2014年~2020年、株式会社ゆうちょ銀行社外取締役。
2019年~ 吉本興業株式会社経営アドバイザリー委員
町田徹 公式サイト

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