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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

ロシアが危ない!経済が急激悪化でも大国化狙い、米国と再び冷戦時代に突入か

文=渡邉哲也/経済評論家
ロシアが危ない!経済が急激悪化でも大国化狙い、米国と再び冷戦時代に突入かの画像1「Thinkstock」より

 ロシアアメリカの対立が顕著化している。

 2014年3月、ロシアは隣国・ウクライナのクリミア半島を併合し、それに対してアメリカおよびヨーロッパが「軍事力による領土の略奪だ」と批判、G8(主要8カ国)からロシアを排除する事態になった。アメリカとロシアは、かつての冷戦時代に逆戻りしたともいえる。

 欧米は、軍事的オプションは採らないものの、ウクライナ情勢をめぐってロシアに経済制裁を行っている。政府や財界要人の在外資産を凍結、大手銀行への融資やエネルギー関連技術供与の禁止などを行っているのだ。また、EU(欧州連合)はロシアに対する経済制裁を16年7月末まで延長した。さらに、止まらない原油安が追い打ちをかける格好で、ロシア経済は急激に悪化している。

 しかし、見方を変えれば、それでもロシアは生きている。それは、なぜだろうか。

 資源大国として知られるロシアは、ヨーロッパに対して大きなパイプラインを持っている。ヨーロッパ諸国は、そのパイプラインでロシアから供給される石油や天然ガスに大きく依存しており、ヨーロッパ全体の資源の約3分の1がロシアから運ばれる構図になっている。

 一般的な石油備蓄などを「プロパンガス」に例えるなら、ヨーロッパはいわばロシアから供給される「都市ガス」で成り立っているわけだ。もし、ロシアがそのパイプを少しでも閉めることがあれば、ヨーロッパには資源が行き届かなくなる。そして、完全に閉めることになれば、ロシア経済も非常に苦しくなるが、それ以上に悲鳴を上げるのがヨーロッパ諸国であることは間違いない。

 そういった構図にあるため、ロシア経済は決して良くはないが、すぐに破綻するというわけでもない。つまり、ロシアという国は日銭が入る金主(きんしゅ)を持っているというわけだ。また、アメリカもさすがにロシアの資源輸出を禁じることはできない。

大国復活を狙うロシア

 欧米とロシアの関係が日々悪化していることは間違いないが、見方を変えれば、若干ながら雪解けムードも出始めている。それは、欧米が主導する過激派組織・イスラム国の掃討作戦に対して、ロシアも参画する動きがあったことだ。

 これについてはまだ不明瞭な部分も多いが、アメリカとロシアの間には、冷戦の時代から共通するひとつの事実がある。「対立はするが、ある意味で出来レース的な部分も多い」ということだ。また、ロシアは対中国においても「対立するが、戦争は行わない」という暗黙のコンセンサスがあるようにも思える。

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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