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片山修「ずたぶくろ経営論」

ホンダ、「不可能だった」航空機エンジン参入の快挙…30年の死闘で他社圧倒の性能

文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
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 ホンダは、航空業界にまったく実績がない。

「実績がないということは、性能や価格が同じであれば、うちがマイナスになってしまいます。コスト勝負にならないために、ほかとは図抜けて違う、ダントツに優れた商品をつくるしかなかった」(藁谷氏)

 かくして、完成したのがHF120だ。前述の通り、燃費は他社製と比べて10%向上するほか、低エミッション、オーバーホール間隔はクラス最長だ。まさに、ダントツの性能を備えるエンジンが完成したのである。
 
 ホンダは、米当局による厳格な型式証明および認定作業に対応し、航空エンジンの事業化を円滑に推進するために、GEとの間に複雑かつ煩雑な会社を設立する必要があった。

 まず、HF120の生産は、基本的にホンダの100%子会社であるホンダ エアロ インクが担い、インフラ等が必要なサービス窓口はすでにこれをもつGEの航空機事業部門であるGEアビエーションが手掛ける。つまり、役割分担が明確になされている。

 そして、エンジンHF120の販売とサービス窓口は、GEアビエーションと、ホンダ エアロ インクが50%ずつ出資するGEホンダが行う。

 ちなみに、ホンダジェットそのものを生産するホンダエアクラフトカンパニーはホンダのアメリカ現地法人であるアメリカン・ホンダ・モーター(通称:アメホン)の100%子会社で、すなわちGEホンダの顧客に当たるわけだ。

次なる課題

 
 開発開始から約30年、04年の事業化決定から11年。昨年12月のホンダジェットの顧客への引き渡しにより、ホンダの航空機エンジン事業もまた、ようやく成果を世に問う瞬間を迎えた。

 GEホンダの次なる課題は「黒字化」である。そのためには、少なくともホンダジェットと同規模の案件を獲得することが求められる。現在、中古機体のエンジン交換事業を検討中のシエラ・インダストリーズへの供給が決まっているほか、複数の企業と交渉中という。

 航空機エンジン事業の黒字化は、時間がかかるのは間違いない。10年単位のビジネスといわれている。しかし、航空機産業は将来に希望をもてる産業だ。

「16年は、実際にホンダジェットが次々と市場に出ていく年になります。ユーザーからの評判が立つようになるでしょう。実際に優れた性能を体感すれば、参入障壁云々ではなくて、『いいエンジンだから欲しい』と、言ってもらえるようになると期待しています」(藁谷氏)

 HF120は、消費者からいかに評価されるのか。黒字化に向けて、勝負はこれからと言える。
(文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家)

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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