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手島直樹「マーケット・インテリジェンスを磨く」

「当期純利益」至上主義が企業を滅ぼす?「目先の利益」追及が危機的経営を招くおそれも

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 キャッシュフローには2つの利点があります。まずは、キャッシュを伴わない損益は調整されることです。ですから、特別損益は調整されることになり、ノイズがなくなります。次に、運転資金などの貸借対照表の項目もキャッシュフローには反映されることです。損益計算書にフォーカスしがちな経営者が多いことを考えると、この利点は非常に貴重です。

 ですから、今後は経営目標が当期純利益やEPSではなく、営業活動からのキャッシュフローやフリーキャッシュフローとなり、それらの拡大の結果として当期純利益やROEが改善するのがあるべき姿だと考えます。これぞまさに企業価値創造を伴う「良いROE」なのです。

 次に経営の短期主義の問題ですが、目先の利益やキャッシュフローを追求する限り、どれほど将来の収益に貢献しようとも、投資を削減したくなるのが人間の弱さです。

 しかし、企業価値を創造するためには、NPV(正味現在価値)がプラスである投資は、目先の利益やキャッシュフローを減らすことになっても、実行するという姿勢を貫く必要があります。こうした姿勢を企業価値創造へのコミットメントの証として高く評価する投資家も数多く存在しますし、こうした投資家が株主になれば株主構成の質も改善され、目先の利益を追求する株主らのプレッシャーから開放されるという好循環が生まれます。

 また、市場はそれなりに効率的ですので、目先の利益が減少したとしても、投資のNPVが時価総額に織り込まれることになるのです。要するに、長期的な経営が口先だけなのか、実行を伴うのかは、目先の利益を犠牲にしてでも将来に向けた投資を行うという経営者の姿勢で試される、ということなのです。長期的経営に必要なのは、現在価値という未来志向の利益指標なのです。

 以上、ROEの分子となる当期純利益について述べてきましたが、次回はROEの分母となる自己資本について考えていきます。
(文=手島直樹/小樽商科大学ビジネススクール准教授)

●手島直樹
慶應義塾大学商学部卒業、米ピッツバーグ大学経営大学院MBA。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。アクセンチュア、日産自動車財務部及びIR部を経て、インサイトフィナンシャル株式会社設立。2015年4月より現職。著書に『まだ「ファイナンス理論」を使いますか?-MBA依存症が企業価値を壊す』(2012年、日本経済新聞出版社)、『ROEが奪う競争力-「ファイナンス理論」の誤解が経営を壊す』(2015年、日本経済新聞出版社)。

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