ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal
第二に、プライバシー侵害の恐れが強まる。現金がなくなると、あらゆる売買は銀行預金や電子通貨によって行われることになるが、これらはすべて記録が残り、政府はさまざまな口実でその記録を閲覧することが可能である。記録が外部に漏洩するリスクもある。
日本では欧州に比べ現金の使用が多く、現金廃止はマイナス金利以上に政治的影響が大きいと予想されるため、政府もそう簡単には実行に踏み切れないだろう。
しかし、外堀を埋めるとみられる動きはすでにある。アベノミクスの「第三の矢」である成長戦略ではキャッシュレス化を重要な施策と位置づけ、金融庁が議論を重ねているし、観光立国を大義名分として経済産業省や総務省が決済インフラの整備を進めてもいる。
個人の資産防衛を困難にし、プライバシー侵害にもつながりかねない現金廃止。キャッシュレスの便利さにつられて安易に賛同しないよう、気をつけたい。
(文=筈井利人/経済ジャーナリスト)