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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

米中、軍事衝突が現実味…米国の容赦ない制裁で中国13億人が飢餓状態→国家破綻か

文=渡邉哲也/経済評論家

 その後のベトナム戦争で、アメリカは戦費調達のために膨大な国債を発行し、戦争後は巨額の財政赤字に苦しんだ。そして71年、当時のリチャード・ニクソン大統領によって金とドルの兌換停止が宣言され、ブレトン・ウッズ体制は終わりを告げた。いわゆるニクソン・ショックである。しかし、その後も世界の金融市場におけるアメリカの支配体制は続いている。

 今も世界の債権の約60%はドル建てであり、当たり前だが、ドルで借りたものはドルで返さなければならない。つまり、各国の金融機関にとって、ドルが手に入らなくなるということは破綻を意味するわけだ。

 マカオのバンコ・デルタ・アジアという銀行は、北朝鮮の資金洗浄に関与していることが発覚し、アメリカとの送金契約が消滅、破綻危機に陥り国有化された。また、フランス最大の銀行であるBNPパリバは、アメリカの制裁対象国との取引を理由に、1兆円近い制裁金支払いと為替関連取引の1年間の禁止を命じられ、大打撃を受けた。

 ドル支配体制においてドルが手に入らなければ、石油や天然ガスなど資源取引の決済もできなくなる。国によっては、国家破綻の危機に直面することにもなりかねない。

中国勝利のシナリオは限りなく非現実的

 世界各国、特に先進国の中で、食料や資源を100%自給できている国は少ない。中国の食料自給率は85%以下といわれており、アメリカから穀物を買えない事態になれば、13億の人民は飢餓に苦しむことになる。

 だからこそ、中国はドル支配体制からの脱却を目指し、人民元の国際化を進めていた。IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨入りも、そういった流れの中で推し進められたものだ。今年10月以降、人民元はSDRの5番目の構成通貨として採用される見込みであることが報道されたが、仮にSDR入りしても、ドル決済を禁じられてしまえば中国経済は破綻に追い込まれることになる。

 資源を買うことができなければ、軍艦を出動させることもできなくなり、これまでの「中国は今後も発展していく」という幻想は根底から覆されることになる。そして、その段階においても対立が融和しない場合、アメリカは金融制裁をさらに強めることになるだろう。

 現在、世界の銀行ランキング(資産額ベース)で中国の銀行が1位、2位、4位、5位を占めており、チャイナマネーは強大に見える。しかし、思い出してほしい。かつて、バブル期には日本のメガバンクが世界を席巻し、そのほとんどが世界トップ10に入っていた。今は、ゆうちょ銀行と三菱東京UFJ銀行が下位に食い込むのみだ。

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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