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森真理「きれいで元気になるための栄養学」

ココナッツオイル健康説の嘘?体に危険?脂質異常症、動脈硬化、糖尿病リスク増

文=森真理/武庫川女子大学国際健康開発研究所講師、栄理栄養士
ココナッツオイル健康説の嘘?体に危険?脂質異常症、動脈硬化、糖尿病リスク増の画像1「Thinkstock」より

 少し前から、その絶大な健康効果で注目されているココナッツオイル。痩せられる、コレステロールを下げる、糖尿病予防に有効、そして認知症の予防にまで効果があるといいます。

 これは、果たして本当でしょうか?

 ココナッツオイルは90%以上が飽和脂肪酸でできています。飽和脂肪酸というのは、動物性脂肪と同じ種類。ただ、同じ飽和脂肪酸でも中鎖脂肪酸なので代謝が速く、エネルギーになりやすい脂肪であるのは確かです。

 しかし、現在私が調査をしているスリランカでは、昔からココナッツを日常的に使用し、飲食用だけでなく燃料用などにもなり、捨てる部分がないくらいに有効利用しています。そして、スリランカで昔から食べられている伝統的な食事には、そのほとんどにココナッツやココナッツオイルが使われているような状態です。

 そんなにココナッツを常食しているスリランカの人たちは、さぞかし健康だと思われがちですが、私たちが実施した調査研究の結果では、まったくそうではありませんでした。

 現地の協力者を得て実際に行った健康診断では、協力者の30~50歳代の男女209名中、男性の約30%、女性の約45%が肥満であり、男女ともに60%以上が脂質異常症という結果でした。

 そして、ココナッツオイルを常食している人たちでは、そうでない人たちと比べてLDLコレステロールが高く、動脈硬化のなりやすさを示す動脈硬化指数も、ココナッツオイルを常食している人でも高く、動脈硬化になりやすい結果となっていました。

 2009年に内戦が終わってからは、コロンボを中心に経済も発展しました。そして、そこで出会う生活レベルの高い人たちでは、糖尿病を発症されているケースも多く見受けられました。

 これらの食事や健康診断の結果から、この調査対象の地域では、脂質の摂り方やカロリー摂取量の問題があると考えられます。香辛料は使われているのですが、しっかりとした塩味や甘味が感じられる味付けの方法にも問題があると考えられます。

多すぎるエネルギーが蓄積されるおそれ

 以上の情報から、巷で噂されているココナッツオイルの健康効果について、私なりに考えてみました。

 ココナッツオイルの中鎖脂肪酸は代謝が速く、確かにエネルギーとして使われやすい脂肪酸ではあります。それで、スポーツ選手のように大量にエネルギーを必要とする生活活動量の多い人では有効だと思われますが、エネルギー摂取量が多すぎる方では、ココナッツオイル以外で摂取した多すぎるエネルギーが体内に溜められてしまうことは避けて通れません。

 また、認知症に効果があったというアメリカの論文も確認をしてみました。対象は、高齢ですでに認知症を発症されている方でした。そして、おそらく糖尿病など糖質をうまく利用しにくい体質の方だったのではないでしょうか。脳は主に糖質をエネルギーとして使うことができるのですが、糖質をエネルギーとして利用しにくい人では、ココナッツオイルのようなエネルギーに代わりやすい中鎖脂肪酸を有効利用することは、理に適っているように思いました。

 要するに、ココナッツオイルには健康に有利に働く効果があるとは思いますが、その使い方や食べる量によって、プラスにもマイナスにもなることが予測されます。

 良い情報があるからといって、まずご自身の現状を把握されないまま、良い成果のみを鵜呑みにされてとびつくようなことは、なるべく避けていただきたいと思っています。
(文=森真理/武庫川女子大学国際健康開発研究所講師、栄理栄養士)

森真理/東海大学健康学部准教授、管理栄養士

森真理/東海大学健康学部准教授、管理栄養士

一般社団法人 スローカロリー研究会理事
日本循環器疾患予防学会 評議員
食育グループ Healthy+代表
西宮市教育委員主催、宮水ジュニア食育講師
NPO法人 世界健康フロンティア研究会 食育担当理事

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