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ルディー和子「マーケティングの深層と真相」(2月29日)

「モノを持たないシンプルな暮らし」を主張する人々は、なんでも買える金持ちという事実

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 心の問題(精神の健全さ)を追求する傾向は、それだけ世界の経済的レベルが向上したからだともいえる。衣食住の心配をしなくてもよくなり、社会的にもある程度の成功を収めると、人間の次なる欲求は精神的なものになる。その証拠に、ミニマリストとして本を書いたりメディアに登場したりする人たちの経歴をみると、一度は欲しいものをなんでも買えるくらいの金持ちになり、そして物質的欲求が満たされても幸福感はもたらされないことに気がつき、ミニマリストに転向したという共通点がある。

 つまり、同じような「モノを持たないシンプルな暮らし」をしていても、こういった人達は、買おうと思えばなんでも買え、食べようと思えばキャビアやステーキでも食べられるといった点で低所得者とは違う。皮肉な言い方をすれば、お金持ちだからこそクールでかっこいいミニマリストになれるのだ。

 たとえば、米アップル創業者の故スティーブ・ジョブズはミニマリストだといわれる。その理由のひとつに、彼がジーンズと黒のタートルネックばかりを着ていたことが紹介される。逸話では、三宅一生にタートルネックを100着注文したといわれるが、これは忙しいために何を着るのかを考えるのが面倒だっただけではなかったのだろうか。ジョブズは、自分自身をブランド化する手段のひとつとして、いつも同じ服を着ていたともいわれる。彼は禅への造詣も深く、会社経営も製品デザインもSimplicityをモットーとしていた。だが、ブランドとは何かもよく理解していた。

 ミニマリストもシンプルライフも、ある程度の経済レベル以上になって初めて、登場してくるタイプのライフスタイルなのだ。ジョブズが、どこにでもある黒のタートルネックではなく、三宅一生のものを選択したことを覚えていないと、メーカーや小売業者は都市部の一定の所得者たちのシンプルライフには対応できない。

 次回は、このような矛盾を抱えた消費者たちへアプローチする手段としてのコンテンツマーケティングについてみていきたい。
(文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学教授)

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