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鷲尾香一「“鷲”の目で斬る」

シャープ、鴻海による救済頓挫か…経営陣、救済される側の感覚欠落で身勝手な要求列挙

文=鷲尾香一/ジャーナリスト

(4)ブランド価値の重要性
 顧客サービスや供給製品への責任を含むブランド価値向上のための努力に関する相互理解のもと、「シャープ」ブランドの価値の維持・向上に資する方法により「シャープ」ブランドを継続使用すること

(5)当社の技術の保持
 当社の日本における研究開発・製造機能を維持し、当社のコア技術の流出を防止するため相互に協力していくこと

 特に、従業員の雇用維持については、以下について義務が規定される予定としている。

(1)当社の経営の独立性について、株式引受契約に定めるところに従い、法令および取引所規則において許容される限り、最大限尊重し維持すること

(2)上記の目的のため、当社およびその子会社の具体的なガバナンス体制、手続きおよびポリシーについて、当社との真摯な協議を継続すること

(3)当社およびその子会社の事業の一体性を維持し、当社およびその子会社に対し、その事業の処分を行わせるような議決権の行使その他の影響力の行使を行わないこと

(4)自然退職並びに定期的な異動および昇給の場合を除き、当社および当社子会社の従業員の雇用および雇用条件の維持の原則にコミットし、必要人員や組織体制の最適化について当社の経営陣に最大限の自律性を認めることを含め、既存従業員の雇用維持のためのプランを実行すること

(5)当社の技術を、当社およびそのグループ会社内かつ日本国内に保持するために当社と協力すること、また、当社およびその子会社からの技術流出や海外への技術流出を防止するための実効的な手段を構築すること
 
 まるで、不平等条約のような内容だ。約6000億円という巨額の資金を投入しても、もしこれらの条件を真っ当に守ろうとすれば、シャープの経営をコントロールすることはほとんどできないだろう。

 経営陣にも手を付けられず、リストラもできず、経営方針の決定もできない。その上、肝心の技術を手に入れることもできないとなれば、ホンハイ側にしてみればなんのためのシャープ救済なのかということにもなろう。ボランティアとしてシャープを救済するわけではあるまい。

 となれば、この救済劇は「どうもうまくいかないのではないか」との予感がする。シャープの経営陣には、自らの引責辞任と引き換えに従業員の雇用維持を要求するぐらいの意識が必要だ。同社経営陣には、経営責任と救済される側としての意識が欠如しているのではないか。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)

鷲尾香一/ジャーナリスト

鷲尾香一/ジャーナリスト

本名は鈴木透。元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。

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