ホンダジェット開発成功を呼んだ70年前の学術書、FBいいね！営業で売上増…共通点は？

温故知新こそイノベーションの宝庫

　ホンダジェットのケースは、業界の常識に挑戦するため70年近くも前に書かれた学術書を読み直して発想を得ている。イノベーションでは既存の常識が足かせになると思われがちだが、このケースのように逆にヒントになる場合もある。既存の常識でも足かせではなくヒントになるものこそ本物の古典といえよう。不易流行の不易にあたるものだ。

　また、「フェイスブックいいね！営業」は、6次のつながりという法則らしきものに光をあて、最新テクノロジーを組み合わせて現代に蘇らせ営業に活用したものだ。まさに、ビジネス世界でのイノベーションにも温故知新という切り口が有効であることを示唆してくれる事例だ。

　繰り返しになるが、古典を侮ってはいけない。イノベーションは新結合といわれるように、技術開発においてもビジネス開発においても、古典と現代の新結合こそイノベーションの宝庫なのである。そのためには、古典と最新技術の両者に通じていなければならない。いずれかに詳しくなることはできるし、そうした人は多い。しかし、その両者に通じることはなかなか難しい。古典に詳しい人は最新技術に疎い。最新技術に詳しい人は古典に疎い。両者に通じることは容易ではない。そこにイノベーションの難しさがある。
（文＝宮永博史／東京理科大学大学院MOT＜技術経営＞専攻教授）

【参考文献】
1.「受注、100機上回る」（1月20日付朝日新聞）
2.「凄い売り方」（「日経ビジネス」＜日経BP社／2月1日号＞）