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山崎元「耳の痛い話」

文化人の厳しい懐事情…ギャラは芸能人の数分の一、専業作家で食えるのは数十人足らず

文=山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表
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 ちなみに、いわゆる文化人テレビ出演料は、世間でイメージされているよりも高くない。時間当たり単価は、講演料の数分の一だ。民間の放送局の間では、通称「文化人価格」と呼ばれる、緩やかな談合価格が存在し、その価格は同じ番組に出演する芸能人の数分の一であることが多い。

 売れている芸能人は、付き人から同事務所の売れないタレントまで食わしているので、妥当な価格設定だとも思える。テレビ局側から見ると、「文化人は、テレビに出して顔を売ってあげるので、講演の仕事を増やして、自分で稼いでください」といったニュアンスの価格設定だ。

 マネジメント事務所に所属していると、依頼案件を断る時や、ギャラの請求をする時などに気が楽な面があるのだが、文化人にビジネスを依頼する側が、介在する事務所の有無によって依頼するか否かを変えるかどうかは微妙だ。トータルに見て、マネジメント事務所への所属が得になっていない文化人は少なくないのではないだろうか。

厳しい職業作家

 テレビ出演や講演で稼ぐ文化人よりも効率が悪いかもしれないのは、職業作家だ。永井荷風や夏目漱石の頃は、一般人の収入に対して作家の収入は相当に大きかった。原稿料は高かったし、作家はスターだったし、出版は成長産業だった。しかし、長きにわたって字数当たりの原稿料はデフレが止まらない。単行本の印税は概ね書籍価格の10%だが、出版は点数が増えている一方で、出版全体の売り上げが毎年落ちている業界であり、作家の収入事情はごく一握りの売れっ子を除いて大変厳しい。

 職業作家として、そこそこに名の通った人、何年か前に有名文学賞を受賞していて文庫本も複数出ているようなクラスの人でも、印税と原稿料だけなら、一般の勤労者の平均所得(年収約400万円)とそう変わらないことが多い。
 
 文芸の単行本だと、知名度や話題性がある著者でなければ、初版が5000部程度であることが多く、増刷にならない場合が少なくない。ノンフィクションや実用書でも事情は似たようなものだ。一冊が1500円としても、著者に入る初版印税は75万円にしかならない。増刷されて合計1万部売れても150万円だ。

 雑誌などに定期的な連載を持ち、一定の原稿料を稼ぎつつ、これを単行本化してまた稼ぐ、といったワーク・フローを確立しないと、書き仕事だけで食べていくのは大変だが、このビジネス・モデルだと、有力雑誌の連載欄の数が食える作家の数の上限になってしまう。せいぜい数十人だ。

山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表

山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表

経済評論家。楽天証券経済研究所客員研究員。(株)マイベンチマーク代表取締役。1958年北海道生。1981年東京大学経済学部卒業、三菱商事に入社後金融関係の会社に12回の転職を経て現職。資産運用を中心に経済一般に広く発言。将棋、囲碁、競馬、シングルモルト・ウィスキーなどに興味
評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」

Twitter:@yamagen_jp

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