「談合の帝王」平島栄氏のバックには金丸信氏
中央談合組織が機能不全に陥るなかで頭角を現したのが、関西の談合組織を支配していた大林組常務の平島栄氏である。「談合の帝王」と呼ばれた平島氏は、金丸氏の口利きで大林組から西松建設の取締役相談役に転じた。
だが、談合の帝王は失脚した。発端は95年に起きた阪神・淡路大震災の復旧工事だった。神戸港の岸壁復旧工事は、事前の談合で平島氏の西松建設に決まっていた。ところが、東京の佐伯建設工業が超安値の札を入れ、工事をかっさらった。
これに対して「談合破りだ」と激怒した平島氏は、佐伯建設工業の当時の社長を呼び出して辞任に追いやった。談合破りのペナルティとして社長の首をすげ替えた平島氏の荒業に、スーパーゼネコンの首脳たちは腹を立てた。常識外れの行動に恐怖感を持ったとの見方もある。
その後、大手ゼネコンは平島氏を外した新しい談合組織を立ち上げた。大物政治家がバックにいた時代には、スーパーゼネコンといえども平島氏に逆らえなかった。だが、角栄氏や金丸氏がいなくなって平島氏の権威が失墜したため、機に乗じて平島氏を葬り去ることができたわけだ。
談合を撲滅するとイタリア化する?
大物仕切り屋が次々と舞台を去り、談合の世界は一変し、天下りした官庁OBが談合を仕切る「官製談合」の全盛時代を迎えた。官製談合も05年の談合決別宣言でなくなったと思われていたが、実際はなくならなかった。昔ほど大っぴらにはできなくなったが、談合は脈々と引き継がれてきたのだ。震災復興工事の談合事件は、たまたま表面化したにすぎない。
談合は違法行為であるが、必要悪であったことも事実だ。談合を撲滅すればイタリア化するとの懸念が指摘されている。イタリアの建設工事はマフィアが仕切っている。イタリア化を避けるために、時々お灸をすえる。それが、今の談合の摘発事件の実相である。
(文=編集部)