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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

「マイナス金利や異次元緩和により銀行貸出増」は根拠なきデタラメである

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 図表1では民間銀行はひとつしか存在しないが、民間銀行が複数存在する場合でも、民間銀行全体で見れば、上記の議論は本質的に変わらない。

 たとえば、不動産売買の資金決済で民間銀行Cから民間銀行Dに預金50が移動する場合、民間銀行Cの準備(日銀当座預金)が50減少し、民間銀行Dの準備(日銀当座預金)が50増加する。その結果、上記の資金決済で民間銀行全体の準備総額や預金総額は何も変わらない。変わるのは、貸出が50増加するとき、民間銀行全体の預金総額が50増加するということだけである。

 なお厳密には、既述の通り、「準備預金制度に関する法律」に基づき、民間銀行は家計や企業から預かった預金の一定割合(=準備率)を日銀当座預金に積み立てる義務を課されている。これを「法定準備」というが、現在の「準備率」は最大でも1.3%に過ぎない。また、現時点(2016年1月末)の約260兆円の準備(日銀当座預金)のうち法定準備は約10兆円、超過準備は約250兆円であるから、貸出増による預金増で法定準備が少々増加しても、それは超過準備の減少で吸収でき、準備の総額は基本的に変わらない。

民間銀行は日銀の支援を受けずとも貸出増は可

 すなわち、「日銀がマネタリーベース(現金+準備)を拡大すれば、民間銀行は貸出を増やすはずである」旨の主張は、超過準備が現在のような状況では、誤解である。一定程度の超過準備があるとき、現代の金融システムにおける資金決済の中核は「現金」でなく「預金」であるから、民間銀行は貸出需要があれば、「信用創造」機能により、基本的に日銀の支援を受けずとも、貸出を増やすことができる。

 以上が理解できれば、「マネタリーベース(現金+準備)は民間銀行が貸出を増やすか否かとは基本的に無関係」で、「民間銀行が超過準備を日銀当座預金に無駄に滞留させているから、貸出を増やさないのではない」という事実も正しく理解できよう。貸出が増えないのは、人口減少や少子高齢化で本当に貸出需要が極めて少ないのか、銀行の融資部門の審査能力や目利きが低下しているからであろう。また、「超過準備の付利があるから、貸出を増やさない」旨の指摘や、「超過準備の一部にマイナス金利を適用すれば、貸出を増やすはず」旨の指摘も誤解であることも理解できよう。

 なお、日銀に口座をもつのは、準備(日銀当座預金)をもつ民間銀行等の金融機関や、政府預金をもつ政府部門しかない。このため、マクロの準備が減少する場合は、次の3つしかない。

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