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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

「マイナス金利や異次元緩和により銀行貸出増」は根拠なきデタラメである

文=小黒一正/法政大学経済学部教授
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(1)国債の売りオペレーションで日銀が保有国債を売却する場合
(2)民間銀行から政府部門に支払いを行う場合
(3)民間銀行が準備の一部を現金として引き出す場合

財政が厳しい現実に直面するリスク

 ところで、マイナス金利政策の下では、日銀バランスシートの負債側にある「準備」の規模を長期的に維持することは難しい可能性があるという視点も重要である。この意味についても、少し説明しよう。

 まず、すでに説明したように、民間銀行が貸出を増やすか否かにかかわらず、日銀がマネタリーベース目標を維持する限り、マクロの「準備」は減らない。これは、日銀当座預金を持つ民間銀行などの金融機関のいずれかが、必ずマイナス金利という「ペナルティー」を受けることを意味する。

 ただ、民間銀行などの金融機関がマイナス金利の負担を日銀に押し付ける方法もある。それは、マネタリーベースをさらに拡大すべく、日銀が「国債の買いオペレーション」を実施するときに、保有する国債をより高い価格で日銀に売却することである。マイナス金利に伴う負担を日銀に転嫁するのである。

 たとえば、マイナス金利で合計5億円の損失が予測される場合、これまで100億円で日銀に売却していた国債を105億円で売却する。このように負担を転嫁することができれば、銀行などはマイナス金利の負担を免れることができる可能性がある。

 2月16日にスタートしたマイナス金利政策(NIRP)では、日銀当座預金を「基礎残高」「マクロ加算残高(法定準備を含む)」「政策金利残高」の3層構造に分割し、付利を各層に応じて、「プラス金利(0.1%)」「ゼロ金利」「マイナス金利(▲0.1%)」で適用する方式に改められたが、マイナス金利の幅や適用範囲を含め、今回のマイナス金利政策は日銀の裁量に負う部分が多く、不確実性が消えることはない。

 すなわち、これは一種の「ババ引きゲーム」で、明らかに「不安定な均衡」である。現状では、超過準備のうちマイナス金利が適用となる範囲(政策金利残高)は約10-30兆円にすぎず、マイナス金利も▲0.1%という微小な幅であるため、超過準備を取り崩して現金として引き出す民間銀行の誘因は小さいが、マイナス金利の適用範囲やマイナス金利幅を大きく変更すれば、現金として引き出す誘因は大きくなり、日銀が超過準備の規模を長期的に維持することが難しくなる。

小黒一正/法政大学教授

小黒一正/法政大学教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。


京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。


1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。会計検査院特別調査職。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。


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