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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

安易なアパート建設・経営、人生を不幸にする危険…安定した賃貸困難、多額借金抱える

文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役
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安定した賃貸収入の確保は困難

 ところが、アパート経営は土地所有者のみならず、一般の会社員の資産運用手段としても喧伝されている。低金利で行き場を失った余剰資金の投資先として「老後資金のための資産形成手段のひとつ」として勧められるケースは多い。

 需要があやふやなのに「えいや」でアパート投資を行う、これは嵐を前にして、港から小さな船で漕ぎ出すような行為である。多くのアパート会社はサブリース(借り上げ)で一定の家賃保証をうたって、オーナーの安心・安全を語っているが、こうした条件もよく調べてみる必要がありそうだ。

 長期間のサブリースの多くには、15年程度後の大規模修繕についての「承諾」が条件であるケースが多い。その時に修繕資金が確保できなければ、保証はアパート会社のほうから解除できる。アパートは経年劣化が早く、また次々と新規物件が供給されることから、築年の浅い物件に入居者が流れ、築10年もすると空室だらけになるアパートもざらに存在する。家賃保証とうたっていても、その金額まで保証している会社は少ない。多くは金額条件の見直し条項があり、市況が厳しいときにアパート会社が救ってくれるような内容のものは少ないのだ。

 サブリースは当然手数料があるので、オーナーから見れば満額の賃料は受け取れない。また、テナントの入れ替わりごとの部屋の補修や大規模修繕に当たっては、アパート会社の系列会社が行うので、オーナーに業者の選択権はなく、なかには法外に高い修繕費等を請求された例も多いと聞く。今後、加速度的に生産年齢人口が減少していくなかで、安定した賃貸収入を確保できるアパートは少ないのだ。

借金を子供や孫に残して死んでいくのと同義

 平成バブル崩壊の頃、『ナニワ金融道』という漫画が流行った。大阪の金融会社を舞台に「金貸し」の裏側を面白おかしく語り、大ヒット、ドラマや映画にも採用された。このドラマの主題歌が、ウルフルズの『借金大王』だ。

「貸したカネ返せよ~」という、軽快なリズムに乗せて歌うこの歌詞に真実が隠されている。7000万円の借金で、とりあえず相続税を逃れたアパートオーナーは、どんなに金利が低い時代であっても、借りた元本7000万円を「返済する」アテがなければ、いわば借金を子供や孫に残して死んでいくようなものである。

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

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