アマゾンの直取引の支払いの早さや条件が取次との取引よりも良いことなどから、当社のトップは直取引を導入するように社内に指示しました。しかし、もう取次はトーハンと日販しかないといっても過言ではありません。取次の中抜きをするということは、2社に真っ向からケンカを売ることになり、恐いです。昨年12月期にアマゾンへの出荷を完全直取引に切り替えた出版社が32社もあると聞きましたが、そこまでの勇気はありません。今でも新刊の搬入数(取次からすると仕入数)は絞られています。この『取寄せ注文』なら、まずは取次にある在庫から出荷されるので、取次に対して大義名分がたちます。アマゾンもそのあたりの事情をよく知っているので、『取次の顔も立てたサービス』と謳って出版社に提案していました」

 また、別の出版社営業幹部は語る。

「アマゾンからは、うちで出す全商品が対象といわれましたが、取引条件も当社にとってはよい数字を提示いただきました。しかし、アマゾンから示された資料を見て驚きました。アマゾンが当社に発注した商品や実売、商品調達率などを細かく数字で見せられたのです。発注金額と実売金額を比べると、かなりの開きがありました。さらに、その差が機会損失だともいわれました。直取引をやれば、調達できなかった商品が売り上げに変わったかもしれない、そういう甘い誘いを受けました。取引条件も合わせて考えれば、出版社にとっては魅力です」

 アマゾンが取次に発注した際の「取次在庫のヒット率」は60%程度だという。裏を返せば、出版社の機会損失が4割くらいに上る可能性もあるのだ。

恐ろしい数の商品が動くアマゾン

 では、なぜこのような事態が起こっているのか。出版流通に詳しい関係者は語る。

「アマゾンからは膨大な数の注文が飛んでくるため、取次がアマゾンの注文に100%応えることはできないでしょう。アマゾンの「和書」年間売上高は1500~1800億円だと推測されています。1カ月に150億円もの商品が売れているとは、恐ろしい数の商品が動いているのです。取次とすれば、アマゾン専用の倉庫をつくらなければ、すべての注文に対応できないはずです。それに、1兆5000億円の出版市場の多くを占めるのが書店の売り上げです」

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