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「ココロに効く(かもしれない)本読みガイド」山本一郎・中川淳一郎・漆原直行

あの人気司会者、いかに30歳コンビニバイトから上り詰めた?10年後に花開くために

文=漆原直行/編集者・記者
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 鷲崎さんの魅力は、軽妙なトークの運びと、独特な言語センスや豊富な雑学知識に基づいた、合いの手の妙にあります。とにかく、場の空気をドライブさせるのが抜群に上手い。ゲストの話した事柄を絶妙なたとえで言い換え、より面白い方向へと脹らませていく“たとえ芸”など、鷲崎さんの巧みな話術によって、相手である話者の魅力は乗数的に引き出されていきます。そうして醸成されていくのが、トークが“うねる”ような空気感。それがなんとも心地よく、ときにはスリリングだったりして、グイグイと引き寄せられてしまうのです。

 その話術は、自分が人前で喋ったり、司会進行役といった座を回すミッションを任されたりしてみると、どれだけ冴え渡っているか痛感させられます。

 ここで自分の話を持ち出すなんておこがましいのですが、僕も不惑を迎えるころになってから、お仕事上のよいご縁や好機に恵まれて、トークイベントやちょっとした講演会など人前で喋る機会をいただくことが増えてまいりました。また、ネット番組やラジオ番組に呼んでいただいたりする機会も、チラホラと頂戴するようになりました。本当にありがたいことです。身に余ります。せっかくのお声かけですから、誠心誠意、務めさせていただきます。

 ……とおのれの所信表明はともかく、そうした場を経験すればするほど、鷲崎さんのトーク巧者っぷり、座回し無双っぷりを改めて思い知るわけです。いや、同じ土俵に立とうとするどころか、片足の親指の先を土俵に1ミリくらい乗せること自体、甚だ僭越ではございますが、彼我の圧倒的な格差に若干呆然となってしまいます。

夢無し人である自分を少なからず肯定的に捉える

 本書の中には、そんな鷲崎さんの語り部としての輝きが、そこかしに散りばめられています。シンガーソングライターとしての顔も持ち、ブルースをこよなく愛する彼の音楽観であったり、鮫好きを公言しながらもこれまであまり語られてこなかった鷲崎流・鮫の愛好道であったり、影響を受けた文芸作品の話題だったりなど、有り体に言うところの“文系男子的趣味論/こだわり論”的な言説は、かなり興味深いものでした。

 ただ、個人的にいちばん刺さったのは、30歳でラジオの世界に入ってから現在までの歩みを振り返りつつ、四十路を迎えた現在の自分をどう捉えているかについて語った最終章「これまでもこれからも」です。

 その中の「子どものころになりたかったもの」という一節に、次のようなくだりがあります。

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