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「ココロに効く(かもしれない)本読みガイド」山本一郎・中川淳一郎・漆原直行

あの人気司会者、いかに30歳コンビニバイトから上り詰めた?10年後に花開くために

文=漆原直行/編集者・記者
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<では、どういう人になりたかったのか。幼少の頃の記憶を紐解いてみることにしよう。と思ったが記憶の紐は絡まるほど複雑ではなかった。小さい頃からずっと「別になんにもなりたくなかった」からである。そもそも未来とか将来とかを想像することがあまりない少年時代だった。ないまま青年期を迎え、三十代を終えて現在に至る。
(中略)
 絶対夢を持たなければいけない、という大人からの同調圧力みたいなものに恐怖があったのは確かだ。クラスで絶対好きな人がいなきゃいけないっていう風潮あったでしょう。あれもなんか苦手だった。「いない」というと嘘つき呼ばわりされてしまう。その延長線上にどうも夢のくだりがある気がしていた。(中略)なんだか給食を食べ終わっていない子を見るような視線で、もたもたするな、といつも叱られているような気がしていた>

 そんな葛藤を抱えていた鷲崎少年は、ある日、かのタモリ氏がテレビで語った「みんなが夢を持たなきゃいけないってのは、戦後民主主義教育の一番の間違いなんだよ」「夢がないと幸せになれない、みたいなナヨナヨしたこと言ってるからダメなんだよ」「無駄な荷物は持たないに越したことないね」などの発言を耳にして衝撃を受け、「夢無し人である自分を少なからず肯定的に捉える」ようになるのです。

 そして少年は、極めておぼろげな、しかし個性的で小憎らしい将来像を描き始めます。

<中学生になった頃、将来について話す度に「自分はガウォークみたいになりたい」と答えていた。
 ご存じでしょうかガウォーク。アニメ「マクロス」シリーズを代表する変形ロボ「バルキリー」の変型形態の名前である。戦闘機から人型ロボットに変型する途中の、乱暴に言えば戦闘飛行機に手足の生えた状態なのだがこれが発表当時から大変好きであった。(中略)何かに変形する途中の段階なのにも関わらずその状態が魅力的である、というのが夢無し人にとって大いなる希望になったのだろう。常に何かの途中でいたい、だってなっちゃったらオシマイじゃん、というのが中学生当時の精一杯の主張であった。
 (中略)
 一旦口にしたガウォーク宣言はその後心の大きな部分をずっと占領することになる。(中略)その時その時で面白そうなものに手を出しては飽きたらやめる、を繰り返しているうちに今の仕事に辿り着いた。
 曲がりなりにも人型に変形出来たと一応は考えても良いだろうか。長く使わなかった関節駆動部分をギクシャクさせながらも、背筋を伸ばしてもう十二年になる>

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