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「ココロに効く(かもしれない)本読みガイド」山本一郎・中川淳一郎・漆原直行

あの人気司会者、いかに30歳コンビニバイトから上り詰めた?10年後に花開くために

文=漆原直行/編集者・記者
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 鷲崎さんが、音楽活動などをしつつコンビニ店員としてバイト生活を送っていた30歳のとき、放送作家をしていた大学時代のサークル仲間に「番組内の企画でギターを弾いてくれ」と頼まれ、当初はオンエアでほとんど喋ることもないまま、即興でギターを弾いたりしていた……というのはファンによく知られている逸話です。そうして文化放送に出入りするようになり、(ご本人がラジオ番組で語っていたことによれば)「お、コイツそこそこ喋れるじゃん。制作費も少ないし、安いギャラで使えそうだから番組のアシスタントにでも使ってしまえ」と偉い人が思いついてしまったところから、現在のような地位を確立するまでにいたる、という塩梅。

 あるようでないようで、でもまあ、非常に珍しいケースにはかわりないでしょう。もしかしたら、夢見がちな文系男子のシンデレラストーリーみたいなものなのかもしれません。ここから敷衍して、話を一般化してしまうのは無理がある、というのもわかります。

誰だって、10年先のことなんてわからない

 しかしアングルを変えてみると、10年前に現在の自分の姿を想像できていた人なんて、果たしてどれだけいるのだろうか、実際はそんなにいないのではないか、とも思うのです。程度差はあるでしょうが、誰しも多かれ少なかれ「自分では思いもよらなかった展開が生じて、気がつけばいまの姿に至っていた」なんて感覚を持っているはず。つまりはそれくらい、未来なんて茫漠としていて、曖昧なものだったりするわけです。

 鷲崎さんは聡明な地頭をお持ちの方ですし、多彩な雑学知識を蓄えておられ、さらには天才的な言語感覚とそれを土台にした圧倒的な言葉選びの瞬発力を携えていらっしゃいますから、タダ者でないのは間違いありません。そもそも、確かなギターテクニックと、作詞・作曲の才能を持ったミュージシャン(ご本人は、この肩書きを自分から名乗ったことはないとおっしゃっているのですが……)としての一面もあります。だから先述した逸話にしても、才能はあるものの音楽だけでは食えなかった若いミュージシャンがバイトを糊口をしのいでいたところ、好機に恵まれて活躍の場を広げていっただけなのでは? なんてうがった見方もできなくはないでしょう。その意味では、然るべき人物が、然るべき場所で花開いたというだけの、極めて当たり前のハナシなのかもしれません。

 とはいうものの、そんな好機を逃すことなく確実に掴み、結果を出していくというのは、そう誰彼にでもできることではありません。流れに身を任せて飄々と、ガウォークのように生きてきていまの姿があるというのは、一方では、目の前に流れてきたり、置かれたりした機会から逃げることなく、誠実に対応して、評価を積み重ねていったからにほかなりません。結局、自分で活路を切り拓いていかないことには、何も変わらないのです。

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