元祖野菜工場

 ここ数年間で大企業が「植物工場」に進出して世間の注目を浴びたが、サラダコスモの場合、約30年前から室温や水、安全管理面で近代的な設備が整った工場で野菜を生産していることから「元祖野菜工場」とも呼ばれる。こうしたノウハウが世界からも注目され、中田氏はジュネーブにある「国連貿易開発会議(UNCTAD)」に呼ばれ、「気候変動の影響を受けない野菜工場は世界の食糧危機を救う」と演説したこともある。

 中田氏は常に時代の先を読み、リスクを楽しみながら会社を大きくしてきた。中小企業のオーナーというよりもアントレプレナー(起業家)に見える。働いていてワクワク感のある会社だからこそ、地方の中小企業でありながら若い人材が面白がって集まってくるのだろう。

 中田氏は今、自社と地域社会の発展を重ねて見ており、社会的存在としての企業はどうあるべきかを強く意識している。11年後にリニア新幹線が開通して、中津川市に駅ができる予定だ。東京まで50分になる。そうなった時、どんな町にしたいか、住民一人ひとりが頭の中に描いておかないと、その恩恵は受けられないと中田氏は考えている。ポケットマネーを出して講師を呼び、地域の経営者や市民を集めて街づくりの将来像を学び合う講演会を開いている。そこに多くの人が集まり、多くのご縁ができてビジネスにつながるケースもある。本来ならば行政が行うようなことを、企業経営者が実践しているのだ。

 地方創生が叫ばれるが、その実態は補助金頼みだったり、コンサルタント任せであったりする。しかし、本当の地方創生とは、その地域に住む人たちが自ら考え、自ら行動を起こし、自助努力によって成し遂げられるものである。サラダコスモのさまざまな取り組みは、地方創生はどうあるべきかを考えていくうえでも大いに参考になるのではないか。
(文=井上久男/ジャーナリスト)

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