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筈井利人「一刀両断エコノミクス」

「個人消費は経済のエンジン役」はデタラメ!GDPは経済の実像を表していない?

筈井利人/経済ジャーナリスト
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 ケインズの考えに基づき、1940年代にGDP(当時はGNP=国民総生産)が考案された。しかし、それは問題をはらんでいた。スコーセンはこう述べる。

「消費の側から国民生産を見るというこのアプローチには、経済活動が生み出す生産の価値のすべてが含まれているわけではないという問題がある」

 つまり、GDPは最終ユーザーに売られた財とサービスの生産しか勘定に入れない。最終消費段階にまだ到達していない中間投入物、すなわち原材料、半製品、問屋にある製品、未完成品(在庫を含む)に伴う経済活動はすべて除外されてしまう。

 具体的にいえば、GDPには消費者が購入した自動車(最終財)の売り上げは含まれるが、自動車を製造するために使用された鉄鋼、タイヤ、ガラスといった原材料(中間財)の売り上げは含まれない。その理由として公式見解では、中間財の付加価値は最終財の中に含まれており、中間財と最終財の売り上げを合計すると二重計算になってしまうからだ、と説明される。

 重複部分を除くことで、統計のつじつまは合うだろう。しかし原材料を利用可能な財やサービスに変える活動は、いわば経済の心臓部である。それを無視すれば、経済活動の実像をはなはだしくゆがめてしまう。企業の生産活動を過少評価する一方で、個人消費を過大評価することになるからだ。

 こうした問題意識に立ったスコーセンは、GDPに代わる統計の公表を1990年代から主張してきた。中間財を除かず、すべての生産物の売り上げを合算した指標である。この指標では、生産が消費より過少評価されることなく、経済の実像に近いデータを把握できる。しかし、そうした主張はなかなか受け入れられなかった。

個人消費刺激、経済活性化の効果は限定的

 2014年4月、米政府はようやく重い腰を上げた。中間財を含む合計値である「総産出(Gross Output=GO)」を四半期ベースで公表しはじめた(それまでは年1回だけの公表)。公表に先立ち、統計作成を担当する商務省経済分析局(BEA)の局長からスコーセンに対し、「当局は経済活動のより包括的な測定の必要性を認識している」という内容の手紙が送られてきたという。

 BEAが公表した14年の統計でみると、GDPが17兆ドルであるのに対し、GOは31兆ドルと2倍近い規模である。スコーセンによれば、個人消費が米経済に占める割合はGOでみると4割に満たず、GDPでみた7割を大きく下回る。これが経済の現実に近いデータということになる。日本の場合も同様の傾向だろう。

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