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熊本地震、日本の製造業が崩壊的危機突入へ…全国で生産中止地獄

文=編集部
熊本地震、日本の製造業が崩壊的危機突入へ…全国で生産中止地獄の画像1熊本県益城町(新華社/アフロ)

 自動車業界に悪夢が蘇ってきた。熊本県は4月14日から16日の3日間にわたって、震度6弱から最大震度7の激震にたびたび襲われた。九州には部品を含め大手自動車メーカーの主要な生産拠点が集まっている。サプライチェーン(部品供給網)が寸断されたため、操業を停止した。

 2011年3月の東日本大震災では自動車メーカーは長期間、生産を停止した。その再来となるのか。

 九州の自動車生産台数は年間約130万台で、日本全体の1割強を占める。高級車「レクサス」を生産するトヨタ自動車九州は福岡県内の宮田工場、苅田工場、小倉工場の3工場で操業を見合わせた。工場が被災に遭ったからではない。部品の供給に影響が出たためだ。小倉工場はハイブリッド車用部品を製造している。

 トヨタ系の部品大手、アイシン精機の熊本市にある子会社アイシン九州と関連工場はトヨタ自動車九州など自動車メーカー各社に車のドアやエンジンの部品を供給している。地震で工場が被災し再開のメドが立っていない。

 アイシン精機から部品を調達していた日産自動車九州も操業を取りやめた。三菱自動車もアイシン精機製のエンジン関連部品が届かず、水島製作所の工場を止めた。

 ダイハツ九州は軽自動車工場の操業を停止した。

 本田技研工業(ホンダ)は二輪車を手掛ける熊本製作所の操業を止めた。熊本製作所は国内唯一の二輪車生産工場だ。県内には部品の供給工場が多いが、地震の被害を受けた。新年度の二輪車生産計画の見直しを迫られる可能性がある。

 半導体大手、ルネサスエレクトロニクスは自動車向けマイコンの主力生産拠点である川尻工場の生産を休止した。生産再開のメドは立っていない。

 エレクトロニクス業界では熊本県菊陽町にソニーの半導体工場がある。カメラやスマートフォン(スマホ)に使われる画像センサーの主力工場で地震発生以降、生産を停止した。長崎県と大分県にある画像処理用半導体を生産する工場も生産をストップ。ソニーの画像センサーは世界シェアトップ。生産休止が長期化するとスマホメーカーなどへの影響がでる。

 三菱電機は熊本県内にある、電力制御などに用いられるパワー半導体を生産する工場と液晶モジュール工場の稼働を停止した。

 半導体装置大手の東京エレクトロンは震源地に近い合志市と大津町にグループ会社の工場がある。いずれも生産ラインを止めた。

 食品メーカーは山崎製パンが熊本県宇城市の工場の操業を停止。飲料大手のサントリーホールディングスは熊本県嘉島町にある飲料水やビール工場で影響が出て、ストップしている。

サプライチェーンが寸断

 東日本大震災では車載マイコンと呼ばれる半導体のサプライチェーンが寸断され、自動車メーカーは長期間、生産を休止した。

 自動車の頭脳、中枢神経に当たるのが、自動車制御用マイコンだ。ルネサスエレクトロニクスは車載マイコンで世界シェアの4割を占める。この車載マイコンを生産していた茨城県那珂工場が東日本大震災で被災した。

 ルネサスは車載マイコンで高い技術をもち、代替の利かない部品をトヨタやホンダなど日本の自動車メーカーにほぼ独占的に供給していた。

 サプライチェーンは、自動車メーカーを頂点に1次サプライヤーから地場の4次、5次のサプライヤーまでピラミッド構造でつながっている。強固な結び付きによって、在庫を極力もたないジャスト・イン・タイム体制を確立。自動車メーカーの高い国際競争力の源泉となっている。

 歴史は繰り返すのである。今回の熊本地震も同様だ。自動車メーカーが被災したわけではない。熊本にある部品工場が被災して、生産できなくなっている。部品の供給が滞り、自動車メーカーは生産停止に追い込まれた。

トヨタは全国で生産停止

 トヨタは4月17日、18~23日に国内で車両組み立てを行うグループ企業16工場のうち、15工場を段階的に停止すると発表した。ダイハツの本社工場を除くすべてがストップする。23日以降の対応は20日をメドに判断するが、長引く可能性もある。

 福岡県の拠点は15日から生産を止めたが、愛知県や宮城県などの工場も稼働を見合わせる。全体で5万台程度の生産が減る見通しだ。

 トヨタの主力工場のほか、車両の生産を委託するトヨタ車体や豊田自動織機などグループ企業の7工場も生産を止める。日野自動車は19~23日まで、トヨタ自動車東日本も22日から停止する。

 トヨタは愛知製鋼の爆発事故で、2月に1週間車両生産を停止。約9万台の生産が遅れ、夏までに挽回する計画だったが、熊本地震によるアイシン精機子会社などの2工場がストップして、ドア部品やエンジン部品の供給ができなくなっている。熊本では余震が続いており、復旧や代替生産の見通しが立てられないためだ。

【操業停止になっている企業・工場】

※以下、企業名、工場所在地、生産品目
・富士フイルム九州、熊本県菊陽町、液晶テレビなどに使う保護フィルム
・パナソニック、熊本県和水町、電子部品
・ブリヂストン、熊本県玉名市、ゴム製品
・井関農機・熊本製造所、熊本県益城町、コンバイン
・HOYA(熊本工場)、熊本県大津町、フォトマスク(回路原板)
・ニフコ熊本本社工場、熊本県合志市、自動車の樹脂部品

BusinessJournal編集部

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