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田中洋「マーケティングのキーインサイト」

日本人のテレビ視聴時間、実はネットの7倍…8割の人が「テレビつまらない」と感じるワケ

文=田中洋/中央大学ビジネススクール教授

 つまり、受け身的にコンテンツを消費されることがテレビ視聴を特徴づけているのです。マクルーハン的にいえば、こうしたテレビのあり方が、テレビコンテンツのあり方を決めていることになります。より具体的にいえば、テレビのコンテンツとは受け身的に見るために適した性質を帯びているのです。最近のテレビでは「衝撃映像」などのネットのコンテンツを編集して番組にしていることがありますが、これは受け身的に見るために適したフォーマット化されている番組の例です。

 これに対してネットコンテンツの消費の仕方は異なっています。ネットのコンテンツは、ユーザーが自分で探してくるものであることがまずその特徴です。同じテレビコンテンツが動画共有サイト「YouTube」で視聴されたとしても、ネットユーザーはそれを自分で探してきて、見たい部分だけを消費することになります。

 筆者の考えでは、同じコンテンツであっても、自分で探してきたコンテンツのほうが、受け身的に流れてきたコンテンツよりも面白く感じるのです。その根拠のひとつは、心理学でいう「授かり効果」にあります。これは、人間は自分が所有するモノのほうを、所有していないモノよりも、その価値を高く評価する、という現象です。おそらく情報もまた、自分で探して入手した情報のほうが、受け身的に与えられた情報よりも価値が高いと感じられるのです。

 ついでにいえば、買い物で得た商品についての価値も同様です。対面式で買う場合とスーパーやコンビニのようなセルフ式では、セルフのほうがより買い物が多くなることが知られています。人々は自分で選ぶことを好むのです。

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 同じコンテンツでもテレビよりもネットのほうが面白く感じられるであろう、もうひとつの理由は、ネットコンテンツがシェアされたものであることが多い点です。シェアされたコンテンツのほうが、自分ひとりで見ているよりも面白く感じられる、その理由は「録音笑い」に関する知見に関係しています。

 録音笑いとは、コメディやお笑い番組で、お笑い発言があった後に流される笑い声の録音のことです。ふつうで考えれば、わざとらしい笑い声が入るのは「うざい」と感じられるはずです。しかしながら、私たちは録音笑いがあるほうが、ないよりもそのコントが面白いと感じてしまうことが実験で示されています。これは、社会的証明理論によれば、私たちが行動の適否を周囲の他者が取る行動によって判断するためです。

田中洋/中央大学ビジネススクール教授

田中洋/中央大学ビジネススクール教授

京都大学博士(経済学)
日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長を歴任。
1975~1996 21年間、㈱電通勤務。
1996~1998 城西大学経済学部助教授
1998~2008 法政大学経営学部教授
2003・4年度コロンビア大学ビジネススクール客員研究員
2008~2022 中央大学ビジネススクール教授
2022~ 中央大学名誉教授
元・東証一部上場・ソウルドアウト株式会社社外取締役
関心領域:マーケティング論・ブランド論・広告論
田中洋 中央大学ビジネススクール教授のオフィシャルサイト

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