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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

日本経済、2期連続マイナス成長で危機的状況突入か…株価下落速度が史上3番目

文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト

取り組むべき課題

 以上を勘案すると、年前半に取り組むべき課題としては、需要刺激策が非常に重要だと考えられる。先般のG20でも、国際協調によりこの世界経済の難局を乗り切るために、すべての政策手段を用いるという政策協調がされたこともあり、日本もこれにある程度追従すべきだと考えられる。

 すでに昨年度の補正予算というかたちで政策がまとめられており、このメニューについて全般的な方向性は一定の評価ができる。ただ、事業総額を見ると3.5兆円にとどまっており、これは内閣府の試算によれば来年度のGDPを+0.4%程度押し上げるということになっているが、第一生命経済研究所の計算によれば同+0.3%程度であり、非常に力不足である。このため、方向性としては、これをさらに拡充するという方向が良いのではないかと考えられる。

 一方、公共事業について、よく建設現場で人手不足ということをいわれてきたが、建設労働者の労働需給判断DIを見ると、不足感は解消してきており、マイナス金利の面でも、今、安倍政権始まって以来、もっとも機動的な財政政策の効果が出やすい時期になっていると考えられる。

 このため、公共事業も一定割合は増やす必要があろう。具体的には、熊本地震復興を筆頭に、介護施設や保育所の増設の部分については昨年度の補正予算では不十分であるため、そうした方向性の増額も考えられるだろう。また、国内の空港整備や港湾インフラといった日本全体の国際競争力が増すような公共投資であれば、国民にも理解される可能性が高いと考えられる。

 さらには、数年前にトンネルが崩落した事故もあったように老朽化インフラの整備も重要である。日本のインフラは50年以上前に建っているものが多くを占めるため、老朽化インフラ整備については、本気で取り組めば甚大な需要が存在する。こうしたメニューを上手く取捨選択して、いかにワイズスペンディング(賢明な支出)というかたちがとれるかが重要であろう。

目安は需要不足

 具体的に必要な規模については、ひとつ目安となるのは足下の需要不足である。去年の10-12月期時点で年換算8.6兆円となっているため、昨年の補正予算の規模も加味すれば最低でも5兆円規模は必要と考えられる。

 さらに、ESPフォーキャスト調査に基づくエコノミストの予測の平均成長率が実現した場合、今後の日本のGDPギャップがどうなるかを予測すると、消費増税が織り込まれているため一旦は駆け込み需要で縮小するも、その後は反動減でマイナス7兆円のデフレギャップに逆戻りすることになる。

 デフレ脱却を重視するのであれば、次の消費増税も織り込んだかたちで日本経済を考えると、17年度いっぱいまでは厳しいことになる。逆にデフレ脱却よりも財政再建ということを前向きに打ち出すのであれば、消費増税という選択肢もあるため、ここはどちらを重視するかによって重要な決断になってくるのかと思われる。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト)

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。
第一生命経済研究所の公式サイトより

Twitter:@zubizac

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