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三菱自の不正、指摘した日産への疑惑広がる…早い段階で把握か、強烈なプレッシャーも

文=河村靖史/ジャーナリスト
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燃費競争

 これら不正を行ってきた理由は「調査中」で明らかになっていない。三菱自は2000年、2004年と2度のリコール隠しから経営危機に陥り倒産寸前となったところ、三菱重工業、東京三菱UFJ銀行、三菱商事の「三菱グループ御三家」による金融支援を受け、再生してきた。最初のリコール事件の際、当時資本提携していたダイムラー(当時のダイムラー・クライスラー)の品質管理手法を導入、04年のリコール事件の後には「企業倫理委員会」を設置してコンプライアンスの徹底を図ってきた。

 道路運送車両法で定められた方法以外で走行抵抗データを取得する行為は、これらリコール事件後、コンプライアンスの徹底していた時にも続けられてきた。高速惰行法では燃費が悪くなるケースがある。このため「『これでいいんだ』と思って疑わずにやっていた可能性がある。法規を満たしていないという意識がなく、これが社内のやり方だと思っていた可能性がある」(相川氏)としている。違法なデータ取得方法を25年間にわたって続けてきた理由は不明だが、高速惰行法は惰行法よりもデータ取得に要する時間が半分程度であり、新型車の開発期間を短縮するためだったとの見方もある。

 不正の背景には、軽自動車の低燃費競争があるとの見方は強い。今回、燃費で不正を行ったeKワゴンとデイズの開発で11年2月の当初掲げた燃費の目標は、26.4km/lだった。しかし、役員も出席する社内会議で燃費目標は5度にわたって引き上げられ、最終的に13年2月には29.2km/lにまで目標は引き上げられた。

 当時はガソリン価格が高い水準で推移していたこともあって、低燃費で車両価格の安い軽自動車が人気で、低燃費競争が激化していた。12年9月に発売したeKワゴンのライバルであるスズキ「ワゴンR」の燃費が28.8km/lを達成すると、今度は12年12月にダイハツ「ムーヴ」が29.0km/lを達成した。

 社内会議で29.2km/lの目標が示された理由について「ムーヴの値を基に提案したと考えられる」(三菱自・中尾龍吾副社長)としており、軽ハイトワゴントップの低燃費を達成しようとの意識が、不正の背景にあったことがうかがえる。三菱自は、燃費目標の引き上げに経営陣が関与していたことは否定しており、相川氏も「私は知らなかった」と明言。中尾氏は「他社の燃費情報を技術部門に示すと、こういったことをやれば(一段高い)目標燃費を達成できるとのエビデンス(根拠)が示され、目標を引き上げている。技術的な手法、こういうことをやればできるという報告がなければ目標を引き上げることはない」と話す。

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