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アベノミクス景気回復、主要因は米国好景気…米中欧が同時減速の兆候、円安景気終了か

文=真壁昭夫/信州大学経済学部教授
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 その間、原油の輸出を再開したイランはシェア回復と拡大を狙って生産量を増やしている。そのため、サウジアラビアがイラン抜きでの凍結はできないと主張しているのだ。冷静かつ合理的に考えれば、原油価格の安定には供給を減らすしかない。そのため、市場は増産凍結に関する情報に反応しがちだ。

 しかし、サウジアラビアとイランは今年に入って国交を断絶し交渉すらままならない。産油国にとって本当に重要なのは、価格よりも生産量の維持と拡大だ。原油価格の反発がドルの買い戻しを支えている状況は、基本的に不安定といえる。

 ドルの下落を受けて米国の景気に対する懸念が後退し、米国の株式市場が上昇しているため、FRBの利上げ期待も高まりやすい。しかし、米国はドル安を志向している。利上げはドル買いにつながり、再度、景気への不安を高めるだろう。為替相場を取り巻く世界経済の状況は、昨年とは大きく異なっている。

需給、リスク要因の増加が支える円高

 需給の点からも円は買われやすい。わが国の経常収支(1.貿易・サービス収支、2.所得収支<海外にある債券・債務が生む利子や配当の受け取り>、3.経常移転収支<無償の資金協力、寄付や贈与>の合計額)の黒字は拡大している。15年の経常黒字は16.6兆円と5年ぶりの水準だ。この状況が続くことは、国内から安定的な外貨売り、円買いニーズがあることを意味する。外国人やドルに投資してきた投資家にとって、ドル安が進みやすいなかで円は格好の資金の滞留先に映るはずだ。

 海外経済に関するリスクも増えている。特に以下の4つのリスク要因が重要だ。

1.米国の景気動向
2.産油国のソブリンウェルスファンドの投資行動
3.中国の減速懸念
4.欧州の経済・政治動向

 第2次世界大戦後、米国経済は平均的に5年ごとの景気拡張と縮小を経てきた。直近の景気のボトムは09年6月であり、すでに7年近く景気は回復している。過去の景気循環に照らせば、米国経済はピークまで8合目程度という状況にあるのではないか。企業業績への期待も低調だ。

 産油国のソブリンウェルスファンドは、今後も資産売却を進める可能性がある。それは急速なリスク回避につながる恐れがある。4月に入り、サウジアラビアは国際銀行団から約1兆円の借り入れを行うと報じられた。産油国の財政運営は苦境に陥っている。

 中国の減速懸念は周知の通りだが、足許では不動産市場の過熱が懸念される。これは、中国人民銀行による利下げ、住宅ローン規制の緩和などに支えられた動きだ。経済成長率が低下するなかで再度、住宅価格が下落し始めれば、世界的にリスクオフが進む可能性は念頭に置くべきだろう。

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