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手島直樹「マーケット・インテリジェンスを磨く」

トヨタとソフトバンク、どちらの投資リスクが大きいのか? 資本コストとは

文=手島直樹/小樽商科大学ビジネススクール准教授

(2)マーケットリスクプレミアム

 投資家が、無リスクの資産に要求するリターンと市場インデックスに要求するリターンの差です。もちろん、市場インデックスにはリスクがあるため、無リスク資産よりも高いリターン(つまり、プレミアム)が要求されることになります。マーケットリスクプレミアムに関してはβと異なり、自分で計算する必要はありません。一般的に4~6%が利用されます。もちろん、4%を使うのか、6%を使うのかで株主資本コストは大きく異なりますので注意が必要です。

(3)リスクフリーレート

 10年物などの長期国債の利回りが利用されます。最近はマイナス金利となっているので、リスクフリーレートは株主資本コストを引き下げる要因となります。ですから、理論的にはマイナス金利は株価にプラスの要因となるのです。

 以上、CAPMのパラメーターを見てきましたが、自分で計算する必要があるのはβだけとなります。つまり、βを正確に算出できれば、株主資本コストの質も高まることになります。そこで、次にβの質を高めるための工夫を紹介します。

βの質を高めるための2つのアプローチ

 2つのアプローチとは、修正βと業界βです。まずはシンプルな修正βから紹介します。なぜ修正βと呼ばれるのかというと、前述のプロセスから算出されるβ(未修正β)に以下の公式に示すように修正を加えるからです。

・修正β=0.33+0.67×未修正β

 この公式の前提は、βは長期的には1(市場インデックスと同等のリスク水準)に近づくというものです。βが1と異なる場合、この公式を利用することにより、βが1に近づきます。未修正βに2や0.5を代入してみるとβが1に近づくことがおわかりになると思います。

 では次に業界βを紹介しましょう。業界βは名前が示すとおり、個別銘柄ではなく業界全体のβということになります。個別銘柄のβ算出は、最近の東芝シャープの例を見ればわかるとおり、利用される株価データサンプルによっては、過大評価されたり過小評価されたりする可能性があります。

 そこで、同業であればリスクは同じであるという前提に立ち、他社のデータも考慮して業界のリスクを算出します。大雑把にいうと、同業の個別銘柄のβの平均値を業界βと定義することになります。ただし実際はそれほど単純ではなく、個別銘柄の財務レバレッジ水準の差異を調整するという手順が必要となります。

手島直樹

手島直樹

慶應義塾大学商学部卒業、米ピッツバーグ大学経営大学院MBA。CFA協会認定証券アナリスト、日本アナリスト協会検定会員。アクセンチュア、日産自動車財務部及びIR部を経て、インサイトフィナンシャル株式会社設立。2015年4月より現職。著書に『まだ「ファイナンス理論」を使いますか?-MBA依存症が企業価値を壊す』(2012年、日本経済新聞出版社)、『ROEが奪う競争力-「ファイナンス理論」の誤解が経営を壊す』(2015年、日本経済新聞出版社)、『株主に文句を言わせない!バフェットに学ぶ価値創造経営』(2016年、日本経済新聞出版社)。

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