三菱グループの落日

 三菱重工業は客船事業の大幅赤字などの四重苦で、16年3月期決算で赤字に転落した。同じく同期赤字に転落した三菱商事の垣内威彦社長は「(燃費不正の)事情がよく理解できておらず、具体的なことは言えない」と三菱自の不正問題と距離を置いていた。三菱UFJ銀もマイナス金利政策が業績に逆風となっている。

 リコール隠しで経営危機に陥った05年には、御三家を中心に三菱グループで総額5400億円の支援を行ったが、今回は環境が大きく違う。「三菱自動車から三菱の冠を外させろ」といった極論が、三菱グループ各社トップが集まる定例会合「金曜会」の一部にはあったほどだ。

 三菱重工の内部も複雑だ。宮永俊一社長は、経営支援するにしても「株主にきちんと説明できる範囲内」で慎重に判断するとしていた。相川氏の実父で元三菱重工会長・社長の賢太郎氏が「週刊新潮」(新潮社)上での放言も、同社内や三菱グループ内で強い反発を呼んでいた。その上、05年の三菱重工のコミットを「やり過ぎ。過剰なコミット」との見方が社内にあって、大宮英明会長、宮永氏とも動きたくても動けない。

 三菱グループの落日の間隙を、日産が巧妙に衝いた。

安い買い物

 三菱自は日産や日産販売店にも、生産中止に伴って発生した損失を補填する。日産に対する補償は最低でも300~500億円になると試算されている。日産側は「責任をとってもらう」と強硬姿勢だ。キャンセル分や販売機会を失われた分についても補償を求めるほか、日産ブランドが傷付いたことに対する補償も要求することになるだろう。

 04年秋に三菱自は再建策を話し合った過程で、東京三菱銀行(当時)を中心に軽事業を日産に売却する話が浮上し検討された。だが、三菱重工が強く反対したため、この計画は実現しなかった。一方、日産は軽の開発・生産を何度も検討したが、「単独で利益を出すのは難しい」との結論に達し、三菱自からOEM供給を受けている。自動車業界では、今回の不正は日産が軽に自前で参入する最後のチャンスになるかもしれないといわれていた。

 三菱自の5月12日の株価はストップ高(80円高)の575円。12日の終値で計算した時価総額は5656億円。日産が燃費データの偽装で被った被害額を500億円と見積もってそれを相殺しても5156億円。このうち軽がどの程度の比重になるかは不明だが、破格の2373億円の投資で落ち着いた。

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