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日産の三菱自買い叩き、「できすぎた」シナリオ…不正指摘&発覚→株価下落直後に提携発表

文=河村靖史/ジャーナリスト
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 燃費の偽装や、実際の走行テストをせずに机上の計算で燃費を測定するためのデータを抽出していたのは国内向けモデルだけだ。三菱自による国内販売はグローバル販売の約1割にとどまる。また、営業利益の9割以上を海外で稼いでおり、三菱自にとって国内事業は主力の生産拠点はあるものの、大きくない。燃費偽装問題は、三菱自の業績へのインパクトは限られるとの見方も広がっていた。

 状況の変化を敏感に感じ取った日産の動きは早かった。5月12日は、ゴーン氏が出席して、日産の15年度決算発表が予定されていた。記者会見で三菱自の燃費偽装事件に話題が集中するのは確実ななか、三菱自と軽自動車の協業継続を匂わせればさらに株価が上昇する可能性が高い。決算発表前に資本提携を発表するのが、投資を抑えて三菱自を傘下に収めたい日産にとってギリギリのタイミングだった。

三菱自の本格的リストラは不可避

 ルノー日産グループは、三菱自を傘下に置くことでグローバルのグループ販売台数が合計960万台となる。年間販売1015万台のトヨタ自動車、993万台の独フォルクスワーゲン(VW)グループ、984万台の米ゼネラルモーターズ(GM)グループと肩を並べることになり、「世界トップ3以内の自動車メーカーグループ」を目指しているゴーン社長の夢が一歩実現に近づく。

 日産は、三菱自とピックアップトラックのプラットフォーム共通化や部品の共同購買、電気自動車・プラグインハイブリッドの共同開発などでシナジー効果が創出できると見ており、今後具体的な内容を協議する予定だ。しかし、燃費偽装問題は深刻で、影響がどこまで広がるかは不透明だ。2370億円の投資は本当に安い買い物だったのかは、シナジー効果をどれだけ出せるかにかかっている。

 日産は三菱自に会長を含む役員を派遣して三菱自の立て直しを主導する。ただ、両社を合わせた国内生産拠点は生産能力が過剰で、今後、日産が主導して三菱自でリストラが本格的に実施されるほか、不正を行っていた開発部門も組織体制を含めて抜本的に見直される見通し。

 燃費偽装問題の渦中にありながら、笑顔で握手した三菱自の益子氏と日産のゴーン氏。心の底から笑え合える日はくるのだろうか。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)

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