
世界のプレミアムブランドがこぞって開発を進めるSUV(スポーツ用多目的車)に、新星が現れた。英ジャガーのF-PACE(ペース)だ。各社の競争が激化する市場で、ジャガーはどう闘い、皇室御用達のレンジローバーを有するランドローバーとはどう差別化を図っていくのか。先日行われた国際試乗会の模様をレポートしつつ、Fペースの未来を占ってみたい。
Fペースの国際試乗会は、6つの国に分割された旧ユーゴスラビアのモンテネグロで開催された。私は初めて訪れる国なので、この国の人たちの気質が気になった。事前に海外の観光情報サイト「地球の歩き方」を見ると、次のように書いてあった。
「基本はのんびり屋さんが多く、組織的ではないので、ゆっくりと過ごす人が多いが、男性は見栄っ張りで良いクルマに乗りたがる。だがマナーは最悪で、対向車が来ても無理な追い越しは当たり前で死亡事故が多い」
「これはヤバイ」と思い、いつも以上に安全運転を心がけるつもりで試乗会に臨んだ。
Fペースは、マーケティング上は独BMWのX3、独ダイムラーのメルセデス・ベンツGLC、独アウディのQ5に加えて、トヨタ自動車のレクサスNXなどの日本車をベンチマークとしている。開発ではダイナミクスでX3、クオリティではアウディがターゲットだが、製造品質では常に日本のレクサスを参考にしているという。
ジャガーが秘密兵器を投入
今後、プレミアムSUV市場は黙っていても急成長すると、ジャガーのマーケティング部門は読んでいる。2020年以降は成長が緩やかになるが、この市場はジャガーの成長に欠かせないセグメントだと考えている。独ポルシェがカイエンで大成功したように、ジャガーもFペースで念願の20万台メーカーになれるかもしれない。
つまり、ジャガーにとってFペースはプレミアムSUVの激戦区に送り込む秘密兵器なのだ。チーフエンジニアが「最高の技術で開発した」と熱く語るのも当然のことだろう。
ベースとなるプラットフォームは、セダンのXEとXFと同じ構造のアルミボディ。BMWのX3よりもすこし長いが、実際のサイズはX3に近い。もう少し詳しく説明すると、Bピラー(前部座席と後部座席の間の柱)より前端部はXFと同じで、重量比80%がアルミでつくられている。80個強のパーツは新規に設計しているので、XFやXEのプラットフォームを流用したと考えるのは正しくない。