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金子智朗「会計士による会計的でないビジネス教室」

隠蔽で死者続出…三菱自、不正を不正と思わぬ企業文化、15年前に1度死んでも治らず

文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表
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 たとえば日本航空。同社はかつて私が在籍していた会社だ。10年に経営破綻したとき、辞めてから15年近くもたつ当時の私が真っ先に思ったことは、「会社というのはこうも変わらないものなのか」ということだ。経営破綻によって明るみに出された数々の問題点は私の在職中にすべて存在し、大半の従業員が認識していた問題だったからだ。その後、稲盛和夫氏が日本航空の会長として乗り込み、再建を果たした。

 日産も倒産の淵まで行った会社だ。資金ショートが迫るなか、ギリギリのところで仏ルノーが出資してくれたことによって、倒産から免れたのである。そして、そのとき日産にやってきたのがカルロス・ゴーン氏である。日産V字回復の立役者と持ち上げられることの多いゴーン氏本人は、「再建の答えはすべて社内にあった」と言っている。これもまた、何が問題かはみんなわかっていたということだ。

 このような事例を見るにつけ思うことは、企業文化は行くところまで行かないと変わらないということだ。特に日本企業は能力やスキルではなく人柄に重きを置いた採用をする傾向があるので、人の考え方が同質化しやすい。さらに、いまだに強く残る年功序列のために、下の者が上の者に意見し、正すことも難しい。

 かくして、企業文化はどんどん強固に塗り固められ、自らは変えられないものになってしまう。「バカは死ななきゃ治らない」というが、企業文化も破綻のようなかたちで一度死ななきゃ変わらないほど根深いものなのだ。

 三菱自は、ダイムラー・クライスラーに救済された時点で一度死んでいる。それでも変わらなかったことを考えると、「企業文化は死んでも変わらない」というべきかもしれない。その三菱自を、ゴーン氏率いる日産が実質的に傘下に収めるという。ゴーン氏にしてみれば、三菱自が持つアジア市場での地盤などが魅力的なようだ。

 ゴーン氏には、ぜひとも三菱自の企業文化を根底から変えることを期待したい。日本航空や日産がそうであったように、企業文化を変えられるのはしがらみのない第三者、しかも強力な第三者だけだからだ。ダイムラー・クライスラーからCEOが来ても変わらなかった三菱自は、これがラストチャンスだろう。

 これで変わらなければ、三菱自の存在意義は本当になくなる。
(文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表)

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