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おにぎり茶づけ、なぜ「おにぎり抜き」で販売?客・永谷園・店にもメリットの逆転の発想

文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授

意表をついたカップおにぎり茶づけ

 こうしたカップ茶づけを、さらに魅力的な商品にするアイデアは何かありますか。

 15年3月、永谷園は「カップおにぎり茶づけ」を発売しました。名前から連想すると、ご飯の代わりにおにぎりが入っているような印象を多くの人が抱くと思いますが、実際にはおにぎりは入っておらず、カップにはお茶づけの素が入っているだけです。肝心のおにぎりはコンビニなどの店舗で別途購入し、それをカップに入れてお茶づけの素をかけ、お湯を入れて食するという仕組みです。

 筆者は、こうしたコンセプトに大変感心した次第です。まず、カップにお茶づけの素だけが入っている商品の場合、05年に発売されたご飯付きのカップ茶づけと比較し、開発にかかわる設備投資や時間といったコストが大幅に削減できたと考えられます。

 また、ご飯に関して、近年、技術の進化に伴い、無菌米飯はおいしくなっているものの、それでも店頭で販売されているおにぎりと比較すれば鮮度をはじめ、味の差は歴然としています。さらに、とりわけコンビニのおにぎりの種類は豊富で、消費者はさまざまな味のお茶づけを試すことができます。メーカー側にとっても種類を増やす必要がないということは製造や流通や在庫管理などにおいて大変魅力的です。さらに、店舗においても陳列スペースの最小化、自店のおにぎりに対する販促ツールとしての活用など、大きなメリットがあるように思われます。

 メーカー希望小売価格は83円で、おにぎりと合わせてもご飯付きのカップ茶づけよりずいぶん安く、賞味期間は18カ月と3倍の長さになっています。自社で完結させず他社の商品であるおにぎりと組み合わせるという発想の転換により、消費者はもちろんのこと、メーカーである自社、さらには流通業者にとっても、従来の商品より格段に魅力的な商品になっているといえるでしょう。
(文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授)

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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