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山田まさる「一緒に考えよう! 超PR的マーケティング講座」

大戸屋、なぜめちゃめちゃ美味い?客を幸福にする「スゴい」戦略、11年の試行錯誤

文=山田まさる/コムデックス代表取締役社長、インテグレートCOO
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 鰺フライを食べながら、まわりの様子を少しうかがった。各席で客が注文してから料理が運ばれてくるまでに、それなりに調理時間がかかっている。15分まではかかっていないが、10分以上は確実に経過している気がする。ファストフードでは明らかにない。言い換えれば、注文後に調理をしていることがうかがえる。鰺フライのつけあわせのキャベツさえもシャキシャキして、つくり置き感がまったくない。鰺の味に大いに満足しつつ、一方で久しぶりに訪れた大戸屋の戦略に、興味津々状態に陥ってしまった。

 見透かしたように、「どうぞ。ご自由にお持ち帰りください」と『Taste eyeテイスト・アイ』というリーフレットが卓上に用意されている。用意周到なのである。その小冊子を開いてみれば、『大人の食育セミナー』というコラムが展開されており、裏面では、「大戸屋で人気のお魚メニューはお店で丁寧にこしらえています」と、こだわりの調理方法の紹介がまとめられている。「調理をしています」「つくっています」と言わずに、「こしらえています」という言葉遣いがまた気になる。この日、帰宅後に大戸屋についていろいろ調べてみることにした。

「TEISHOKU」へのこだわり

 もともと東京・池袋にあった大衆的な定食屋「大戸屋食堂」が、現在の大戸屋の原点である。故三森久実・大戸屋ホールディングス会長が、お父さんが他界したことから大戸屋食堂を引き継いだのが1979年。その三森氏は、引き継いだ大戸屋の商売を発展させるも、その後、さまざまな外食のフランチャイズチェーンにまで手を出し、ことごとく失敗。店舗が火災に遭うなどの苦難も経験した後に、定食という原点に立ち返り、「若い女性も気軽に入れる定食屋」という新コンセプトを打ち出して、経営を立て直しに乗り出すのが1992年である。

 以来、価格競争に陥ることなく、素材選びと徹底した店内調理、つくりたてのおいしさにこだわる。現在の店舗数は、国内 328店舗、海外 88店舗のあわせて416店舗(フランチャイズ店を含む、15年3月31日現在)。

 成熟市場で、かつ高齢化が進む国内の飲食店市場での戦いは、順風満帆ではないところもあるだろう。ここ数年は、海外展開にも積極的だが、安易なローカライズを行わず、あくまでも日本の「TEISHOKU」、お袋の味にこだわり続けている。

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