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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

社員が次々と介護離職…企業の存亡を揺るがす経営問題に 業務回らず職場混乱と人材流出

文=鬼塚眞子/一般社団法人介護相続コンシェルジュ代表、保険・介護・医療ジャーナリスト
社員が次々と介護離職…企業の存亡を揺るがす経営問題に 業務回らず職場混乱と人材流出の画像1「Thinkstock」より

 介護離職が取り沙汰されているが、果たして仮に国が仕事と介護の完璧な支援策を制定しさえすれば、介護離職はなくなるものだろうか。筆者は、即座に「NO!」と答える。なぜなら、知識がないばかりに介護離職に追い込まれる方が相当数いらっしゃることを実感しているからだ。これに伴い、企業にとっても従業員にとっても、業務上のさまざまな介護トラブルが増加するかもしれない。

 今回は、企業と従業員それぞれの観点から介護トラブルに対する“王道の防御法”を検証したい。

介護離職はなぜ起きる?

 筆者は、この3カ月間だけでも数百人以上の経営者や人事労務関係者、従業員の方に介護関連の話をしたり、相談にのってきた。あくまでもその限りでいえば、辞めなくてもよかった例が相当数あるのではないか、と思わざるを得ない印象を受けた。

 それぞれの従業員が介護離職に至る原因はどこにあるのか。

 第一は、勤務先の経営陣や役員に介護経験がないために理解が得られずに、退職に追い込まれる例がある。「介護の大変さや苦労を理解してもらえなかった」という悔しさをにじませる従業員が少なくなかった。

 第二に「助け合いのDNA論」の勘違いだ。筆者がお会いしたなかで、「当社は、助け合いの文化がある企業だから、心配をしていない」と言い切った経営陣が何人もいる。助け合うことは非常に大切だし、誇るべき企業DNAだが、あくまでも概念でしかない。何より、介護は職場の外で起こるものだ。

 また、忘れてはならないのが、介護休業等の対象となる親族の範囲だ。従業員の親に限られるものでなく、育児休業の対象と比べても非常に対象者が多くなる。従業員が次々に介護休業等を必要とする事態になれば、いくら助け合いといっても限度があり、具体的な対応が必要になることを企業側は認識すべきだ。

 第三に、オーナー会社や中小企業の経営者に介護経験があることで、トラブルを招くこともある。介護、特に認知症が進んだ方の世話は本当に大変だ。介護経験がある経営者や上司がいれば、一般的には従業員も介護の苦労や大変さを分かち合ってもらえるだろう。

 だが、従業員が休みをとるのと、いくら忙しいとはいっても経営陣が休みを取るのとでは、周囲への気遣いの度合いも、周囲からの理解の得られやすさも違うはずだ。私が出会った経営陣のなかには、それを理解できず、「忙しい私ができたから、従業員もできるはず」と勘違いする経営者がいる。

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

鬼塚眞子/ジャーナリスト、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表

出版社勤務後、出産を機に専業主婦に。10年間のブランク後、保険会社のカスタマーサービス職員になるも、両足のケガを機に退職。業界紙の記者に転職。その後、保険ジャーナリスト・ファイナンシャルプランナーとして独立。両親の遠距離介護をきっかけに(社)介護相続コンシェルジュを設立。企業の従業員の生活や人生にかかるセミナーや相談業務を担当。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで活躍
介護相続コンシェルジュ協会HP

Twitter:@kscegao

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