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筈井利人「一刀両断エコノミクス」

タックス・ヘイヴン批判は間違っている…庶民に多大な恩恵、なくなれば生活が苦しくなる

文=筈井利人/経済ジャーナリスト

 投資信託などの金融商品は税コストが下がった分、運用成績が良くなり、分配金の増額が期待できるだろう。事業会社は税コストが下がった分、製品の値下げや品質改善、新商品開発で消費者の利便を高めるだろう。別に博愛精神からではなく、そうしなければ競争に勝てないからやるのだ。

 よくなされる批判は、「タックスヘイブンのせいで政府が税金を取りはぐれた分、社会福祉の予算が減り、社会的弱者を苦しめる」というものだ。しかし、タックスヘイブンに限らず、企業への課税を強化すれば、その分製品の値段は下がらず、品質も向上しなくなる。だから弱者を助けることにならない。

福祉予算の拡大への誤解

 もう少し説明しよう。福祉予算の拡大を求める人の多くは、弱者にお金を多く渡しさえすれば、それで生活水準が上がると思い込んでいる。しかし、それは経済に対する無知に基づく誤解だ。生活水準を高めるうえでポイントになるのは、お金をどれだけたくさん持っているかではない。持っているお金でどれだけ多くの製品やサービスを買えるかだ。

 多くの製品やサービスが買えるためには、まず多くの製品やサービスが生産されなければならない。もし企業や株主が多くの税金を取られれば、その分、設備や人材の投資に回すお金が減り、生産力は落ちる。すると製品やサービスの生産量が減り、その分物価が上がる。弱者はお金を多くもらっても、かかる生活費も増えるから、結局生活は楽にならない。

 それだけでは済まない。政府のお金の使い方が民間に比べどれだけ非効率か、思い出してほしい。企業や株主から税金をよけいに取って政府に渡せば、無駄遣いされるお金が多くなり、むしろ弱者の生活を苦しくするだけだろう。

「企業は法人税を下げてもらったうえに、タックスヘイブンで税を逃れるとはけしからん」という非難も、同じ理由で間違っている。法人税の引き下げは、一般市民にとってマイナスではない。むしろプラスだ。企業の手元に残るお金が増えて生産力が高まり、消費者は安くて質の高い製品・サービスが手に入る。

 もちろん、政府とつるんで競争を妨げる規制をつくらせ、労せずして利益をむさぼるような企業は、消費者を裏切っているわけだから、厳しく批判されなければならない。しかし、それは規制に守られていることが悪いのであって、税金を多く払っていないことが悪いのではない。すぐれた製品・サービスを供給する能力のある企業なら、政府に税金を払うより、自分で使うほうが社会を豊かにできる。

筈井利人/経済ジャーナリスト

筈井利人/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト

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